国沢光宏のホットコラム

2019 クルマ&バイク情報

Vol.183「バイクエンジンについて」

自動車用エンジンはロジカルに作られており、新開発される形式を見ると基本的に直列ばかり。1気筒あたりの排気量も熱効率が高いと言われる300~600ccになっている。2000ccなら直列の4気筒といった具合。以前はV型の6気筒や8気筒も数多く作られたが、高級車メーカーを除き新規開発されるなど稀少になった。

一方、バイクのエンジンを見ると、自由奔放といってよい。もはや「基本」すら無い。一昔前なら直列2気筒(バイクの場合、並列と呼ばれる)や4気筒が主流だったものの、昨今はV型も急増。水平対向のニーズも依然として高い。1気筒あたりの排気量だって125~800ccまで様々。熱効率のことなど考えていない。なぜ自動車と違うのか?

答えは簡単。バイクに於けるエンジンに要求されるスペックは、効率や静かさではなく趣味性だからだ。しかも同じ形式であっても味付けが全く違うからややこしい。例えばV型エンジン。本来なら並列2気筒より振動が少ないという特徴を持つ。このところクルマなら『SUV』に相当する『アドベンチャーバイク』に多く採用されている。

「Vストローム」

オフロードを走ろうとすると、軽くて低回転からトルクの出るエンジンが好ましい。となれば2気筒だろう。ただ並列2気筒で1000ccくらいの排気量にすると、高回転域での振動が激しく出てしまう。V型2気筒なら1000ccでも滑らかなエンジンになる。私もスズキの『Vストローム』に乗っているけれど、軽くてトルクがあり滑らかに回る。

しかし同じV型でもハーレーは全く違う。ハーレーというメーカー、883cc~1801ccまで全てV型2気筒。なのに上で紹介した「V型エンジンの特徴」がほとんど当てはまらない。絶えず振動が出ているし、軽量でもない。トルクだって絶対的な排気量を考えたらあまり太いとはいえない。鼓動のような爆発を楽しむためのV型2気筒だ。

「BMWに搭載される水平対向エンジン」

はたまたBMWに搭載される水平対向は、一昔前まで「低重心」が特徴と言われてきた。その通りだったのだけれど、タイヤ性能の進化によりコーナーで深くバンクさせられるようになってきた。すると左右にシリンダーを張り出させた水平対向は、シリンダーヘッドが路面と接触してしまう。仕方なく搭載位置を高くしなければならない。

そうなると低重心という特徴などは無い。むしろエンジン特性として考えたらあまり好ましくないと言える。にもかかわらず水平対向エンジン好きのファンは世界規模で数多く存在し、BMWも止めようとしていない。そればかりか、様々なタイプのバイクに水平対向を搭載するなど、積極的に味の濃さをアピールし始めたほどだ。

もはやバイク業界に於けるエンジンの常識など過去のものになったと思う。参考までに書いておくと、ジャンル毎のベストチョイスは競技用のエンジンを見ればわかる。サーキットを速く走るなら並列4気筒。ダカールラリーのような悪路を高速で走る使い方だとV型2気筒。モトクロスに代表されるさらなる悪路だと単気筒といった具合。

自動車のエンジンバリエーションが極端に少なくなる中、バイクは百花繚乱。いろんな味を楽しめる状況にある。バイクも自動車と同じように遠からず電動化となり、エンジン形式だって少なくなっていくだろう。今のうちに特徴のあるエンジンを楽しんでおくことをすすめたい。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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