国沢光宏のホットコラム

2018 クルマ&バイク情報

Vol.177「2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー」

10ベストカー受賞の様子

2018年COTY受賞車のボルボXC40

2018年の日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTYと略)はボルボXC40に決まった。昨年もボルボのXC60だったため、日本COTY始まって以来の2年連続輸入車ということになる。日本のCOTYといえば日本車が妥当と考えている人は多いようで、異論もたくさん出ているようだ。果たしてXC40の受賞は問題あるのだろうか?

海外のCOTYを考えてみよう。そもそもCOTYとは自動車先進国であるヨーロッパが「その年で最も意義のあるクルマを選ぼう」と始まった品評会のようなもの。当然ながら「性能の良いクルマ選び」や「売れるクルマ選び」ではない。最も長い歴史を持つのは55回目となるヨーロッパCOTYを見ると、様々なジャンルから選ばれてきた。

高級車だったりファミリーカーだったり2シーターのスポーツカーだったり、新しい技術を使ったクルマだったり。受賞車を見ると1992年までは全てヨーロッパ域内のクルマだった。しかし1993年に日産マーチが受賞。その後も、ヴィッツと2代目プリウス、リーフが栄誉に輝いてます。アメリカ車は1回だけ受賞した。

アメリカCOTYは1994年から始まっており、今年で25回目。これまたプリウスなど日本車が4回大賞を獲得している。ヨーロッパ車も4車種。近年、韓国車まで2回受賞するなど、バラエティに富む。そして我が国のCOTYだけれど1980年に始まり、今年で39回目。外国車の受賞は3回目と少ない。最も閉鎖されたCOTYだったと思う。

なぜ輸入車がCOTYを取れないのか?理由は簡単。同じクラスのクルマで比べたら日本車より圧倒的に高価だからだ。アメリカに於ける自動車の価格を見ると、カローラとシビックとVWゴルフとフォード・フォーカスは“ほぼ”同じ価格。ヨーロッパ市場でもVWゴルフとシビックの価格は非常に近い。ユーザーからすれば競合車になる。

しかし日本は同じクラスの日本車と輸入車の価格を比べたら、30%程度高価。結果、乗用車販売台数の10%程度のシェアしかなく、日本の市場が閉鎖されていると言われるのも仕方ない状況だったと思う。ちなみにアメリカもヨーロッパも自動車には輸入関税を設けているのに対し日本だけ関税無し。それでも高かったのだ。

そんな中、輸入車が2年連続でCOTYを獲得した。興味深いことに今年の受賞車XC40の価格を見ると決して高くない。安全整備は世界TOPクラス。現在実用化されている装備がフルに付いている。日本車でXC40に匹敵する安全装備を持つのは1000万円級のレクサスLSくらい。エンジンも高価な252馬力を発生する2000cc直噴ターボ。

それで389万円なのだ。日本車であるレクサスUXの価格を見ると、174馬力エンジンで安全装備も全く届かず390万円。レクサスでなくても2000ccターボを搭載し安全装備をフルに付ければ400万円近くになってしまうだろう。輸入車が安くなり、日本車は高くなった。COTYはそんな状況を反映したんだと思う。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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