国沢光宏のホットコラム

2016 クルマ&バイク情報

Vol.152「「2016−2017 日本カー・オブ・ザ・イヤー」候補車種の傾向と要因」

年の瀬恒例となっている日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTYと略)選びの時期を迎えた。今年は選考対象となる車種が驚くほど少ない。通常、10車種を決める一次選考の対象車は50車種を超えるのだけれど、35車種しかノミネートされておらず。しかも一次選考で4車種しか日本車が残らないという異例の状況になっている。

ノミネート車のリストを見ると1年間で発表された日本車は、全てのメーカー合わせ8車種しかなかったのだ。しかも『レクサス GS F』と『マツダ アクセラ』の場合、エンジン追加のみ。フルモデルチェンジということで考えれば6車種しかない。少なくとも直近の40年間で、これほど新型車が少なかった年など記憶にない。

例えばトヨタの場合、兄弟車種を統合して数えても(ノア、ヴォクシー、エスクワイアを1車種とする)、32車種ある。5年に1度フルモデルチェンジするとしたら、毎年6車種新型車が出てくるハズ。同じく日産25車種。ホンダ20車種といった具合。したがって本来なら全メーカー合わせ20~25車種くらい新型車は出ていた。

なぜこういった状況になったのか?日本で販売される車種をドンドン減らしているからに他ならない。好調な販売台数をキープしているトヨタ車のラインアップをチェックすると、エスティマやマークX、ウィッシュ、アイシス、プレミオなど、長い間フルモデルチェンジしていない車種がズラリと並ぶ。日産やホンダも似たようなもの。

振り返ってみると、1980年代までは日本で生産&販売している車種を海外に輸出していた。そんなことから日本と海外で販売する車種が”ほぼ”同じ。30車種のラインアップを持っていたなら、毎年6車種ずつフルモデルチェンジさせなければ世界規模での新鮮な商品ラインアップを維持出来ないと言うことである。

しかし貿易摩擦や高額の関税により、海外市場で販売する車両は海外の工場で生産しなければならなくなっていく。こうなると日本で販売するモデルと海外で販売するモデルが違っていたって問題ない。特にアメリカ市場は、日本より大柄なボディのニーズが多く、専用モデルでないと競争力という点で厳しくなってしまう。

東南アジアに代表される新興国では、コストダウンした車種も必要。ヨーロッパに行けば違う商品性が要求される。そんなこんなで、日本だけで販売される「日本専用車」は生産台数も少なくなった。こうなると4~5年毎のフルモデルチェンジは採算的に厳しい。という理由から、この10年間で日本専用車が急激に減り始めている。

結果、COTYのノミネート車種も激減してしまった。一方、外国車は今までと同じペースでフルモデルチェンジをしているため、全く減らない。今後もおそらく日本車のフルモデルチェンジや新型車の登場は毎年10車種くらいになってしまうのかもしれません。選択の範囲が狭くなる、という点でユーザーからすれば大いに寂しい。

ということで今年のCOTYの一次選考に残った10ベストカーは以下の通り(ノミネート順)。

1. スバル インプレッサ
2. トヨタ プリウス
3. ホンダ フリード
4. 日産 セレナ
5. BMW M2クーペ
6. アウディA4シリーズ
7. ジャガー F-PACE
8. アバルト 124スパイダー
9. メルセデスベンツ Eクラス
10. ボルボ XC90

本賞の有力候補はインプレッサを柱に対抗がプリウス。輸入車だとA4とXC90の評価が高い。果たして今年を象徴するクルマは日本車か輸入車か?12月9日に結果が発表される。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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