国沢光宏のホットコラム

2011 クルマの豆知識

Vol.88「クルマの寿命 ~目安は実際どれくらい?~」

最近「クルマの寿命はどのくらいか?」という質問をよく受けるようになった。一昔前まで5~7年で乗り換えるものだったけれど、今や「使えるまで使う」という欧米のような流れになってきたんだと思う。確かにクルマの寿命というのは分かり難い。どう考えたらいいのだろうか?

まず基本的な考え方として「修理コストが車両の償却コストより高かったら寿命」と認識して欲しい。新車価格260万円のクルマに乗っており、13年目を迎えたとしよう。この時点で1年あたりの減価償却は20万円。20万円の価値を残しているワケ。ここで20万円の故障に遭遇したらどうか?

エンジンが壊れたらほぼ寿命

普通、20万円クラスの故障と言えば、エンジンやミッションといった耐久性の高い大物(特にエンジンはクルマの寿命とイコールだとされる)。壊れた部分だけ修理しても、他のパーツが壊れる可能性大。ということを総合して考えたなら、クルマとして寿命だと判断すべきだと思う。

もう一つ。走行距離による寿命というのもある。1年間で3万km乗るような使い方をしていると10年で30万km。これだけ走ると様々な部品が消耗し、壊れ始めてしまう。 やはり大きな故障に遭遇したときに価値を評価し、決めればいい。300万円の車両なら3万kmで30万円。これが基準です。

30万円であれば修理してイーブン。それ以上掛かるようだったら寿命という判断をすればOK。大雑把なイメージとして、年数なら12年。または走行距離20万kmを越えたあたりで大きなトラブルに遭遇したら、乗り換えを考えるべき。その方が総合的に評価して安く付く。

雪道を走る機会が多ければサビに注意

続いてパーツ毎に寿命を考えてみたい。まずエンジン。エンジン本体についていえば普通に使って30万kmまたは15年持つ。タイミングベルトやウォーターポンプ、発電機といった補機類は10~15万kmで交換しよう。始動時に白いオイル混じりの排気ガスを出すようになったら寿命。

変速機は使用状況によって大きく変わる。これも最近耐久性が増してきているため、ATもマニュアルも(クラッチディスクを除く)、30万 km/15年程度なら問題なし。ATだと変速ショックや変速時間。マニュアルならシフト時にガリガリ音がし始めたら寿命です。

経年変化で寿命を迎えるのがゴム類。特に油脂や水漏れを防ぐためのシール類は硬化によってトラブルを出す。ガソリンホースのひび割れなど火災に直結するから怖い。10年をメドにチェックをすすめておく。15年でほぼ寿命。安価なパーツながら、多くの場所に使われているため全交換は困難。

サビもクルマの寿命に大きな影響を与える。車体の主要構造にサビが出てきたら危険。衝突時の強度を確保できなくなるだけでなく、極端に進行すると走行中にサスペンションの破壊を起こすケースもある。海のそばや凍結防止剤を撒く地域のクルマは定期的に下回りのチェックをして欲しい。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

PAGE TOP