国沢光宏のホットコラム

2011 クルマの豆知識

Vol.89「なぜ震災後の高速道路の復旧が早かったのか?」

東日本大震災で東北地方の高速道路は甚大な被害を受けた。路面の「うねり」が至る所で発生。路肩の崩れによるガードレールの損壊や、橋梁のジョイント部のズレ、道路そのものの崩落まで発生している。ネクスコ東日本によれば、要修理箇所は273(甚大な損傷約100)にも上がったという。

常識的に考えれば数ヶ月単位の工期を必要だとするものの、開通は驚くほど早かった。地震の翌日の3月12日早朝には自衛隊など緊急車両(全輪駆動車のトラックなど主として特殊な車両)の通行が可能になる。そして12日の11時から緊急車両(普通のトラックや乗用車)の通行も開始。

道路崩落(常磐道/NEXCO東日本)

3月16日に東北道を走行した知人によれば「福島県から宮城県にかけては段差のある区間があるため速度を落とさなければならないけれど、大きな問題もなく通行出来た」。私は3月19日に常磐道を走行したが、1カ所で片側規制をしていたくらい(写真の崩落箇所の補修)。

その後、3月20日に常磐道はいわき市まで一般車の通行が可能になり、東北道も3月24日に通行出来るようになった。物資を運ぶため3月26日に走行すると、もはや路面のギャップもほとんど無くなっており、普通に走行できたほど。いろんな意味で驚くほど早い復旧だったと思う。

この件、海外で広く報道されており「アメージング!」(素晴らしい!)とか「どんなマジックを使ったんだ?」「ウチの国にも1チーム派遣して欲しい」みたいな賞賛のコメントが続々と寄せられた。 100箇所の“通行出来ない規模の損傷”をわずか13日間で普通に走れるようにしたのだから驚く。

橋梁ジョイント部の損傷(仙台東部道路/NEXCO東日本)

なぜそんなに早く復旧出来たのか?調べてみたら二つの大きな理由があった。 一つは「基本的に自然災害が多い」というもの。我が国は豪雨により災害などで高い頻度の道路損壊に遭遇する。つまり「慣れている」ということ。復旧技術の高さで言えば圧倒的に世界一だと考えていい。

二つ目は復旧のシステムがキッチリと構築されていることだという。被災地の復興で大混乱しているのは「ぶっつけ本番」だからである。役割分担や予算からして決まっていない。一方、高速道路の復旧工事についていえば、「工費の見積もり」すら取る必要無いほどだという。極端なことを言えば、ネクスコ東日本が損壊箇所を調べ、提携している業者に電話入れるだけで即座に復旧工事が始まるということ。

信頼関係だけで動く。目標を設定してゴーを掛けたら、日本人の突破力は凄いということです。この勢いで被災地の復旧をお願いしたいと思う。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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