国沢光宏のホットコラム

2008 クルマの豆知識

Vol.57「国沢光宏のガソリン講座」

1)燃料の精製方法

輸入車のガソリン表示例。これはハイオク仕様

ガソリンって何から出来ているか? 基本的には原油を蒸留(熱を加える)。
最初に出てくるのが粗製ガソリン(ナフサ)だと考えていい。続いて灯油(ケロシン)、軽油、重油になっていく。ただ現在スタンドで販売しているガソリンの組成を見ると、それほどにシンプルじゃありません。

もちろんナフサをメインとするものの、オクタン価などの調整をするため、LPガスから作る『ブタン』や『アルキレート』、軽油や重油由来の『分解ガソリン』など、数種類の基材をブレンドさせている。

「昔のクルマの排気ガスは良い匂いがした」と言う年配の方も多いけれど、現在のガソリンと粗製が違っていたためだと思う。
ちなみに最近は二酸化炭素の排出量を減らすため、植物由来のバイオ・エタノールを混ぜるケースも出てきた。2007年からエタノール分を3%ほど含む『バイオガソリン』が販売され始め、2010年より本格導入の予定。

2)ガソリンとディーゼルの違い。

こちらはRONで91オクタンだから、日本だとレギュラーでOKです。

ガソリンとディーゼルは着火方法が異なる。軽油の発火点は250度でガソリンより低い。したがって空気をピストンで圧縮し、250度以上の高温になったシリンダー内に軽油を噴射してやれば、容易に爆発する(正確には急激な燃焼)。

一方、着火温度の高いガソリンから最大のエネルギーを引き出そうとすると、ガソリン1に対し空気14.7という理想空燃比を作りだし、そこに点火プラグで火を付けなければならない。したがってディーゼルエンジンにガソリンを入れても爆発しないし、その逆はトラブルの原因になるので注意。

LPガス(常温&常圧でガス体)はガソリンの特性に近いため、理想空燃比を作り点火プラグで火を付ける。ガソリンエンジンとLPガスエンジンは、ほぼ同じ構造だと考えていいだろう(両方の燃料が使えるバイフューエル車もある)。

3)オクタン価を示す数値

オクタン価には「RON」と「MON」という二つの表示方法がある(日本は前者を採用)。
簡単に言うと、RONの数値が高ければ低回転域で発生する「カリカリ」というノッキングを防ぐ効果を。MONの数値が高いと高回転域の「リリリリ」的な音質のノッキングに効く。
いずれにしろオクタン価が高いほどノッキングを起こしにくくなる。

ちなみに日本で売られているレギュラーガソリンは90~92オクタン。
ハイオクが98~100オクタン。前述の通りハイオクとレギュラーを混ぜると、量に比例してオクタン価が変わる。90オクタン1リッターと、100オクタン1リッターを混ぜれば、95オクタンになります。

4)要求オクタン価

なぜ指定オクタン価が違うか? 排気量を拡大せずにエンジンパワーを向上させようとしたなら、圧縮比を高くしたり、ターボの過給圧を上げたりしなければならない。これらの対応、全てノッキングしやすくなる方向。
逆に考えるなら、オクタン価の高いガソリンを使わないと高性能エンジンは成立しなくなってしまう。ただハイオクを入手出来ない場合も想定しており、ほとんどの日本車がレギュラーガソリンでも問題なく稼働する(レギュラーを使えない車種はカタログや取り扱い説明書に明記されているので確認を)。

ハイオク仕様にレギュラーを入れた場合、カタログに注意書きされている通り、最高出力が5~20%くらい落ちると考えていいだろう。ちなみにAT車に限って言えば、最高回転数の3分の1程度の回転数を使っている限り、燃費はほとんど変わらない。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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