国沢光宏のホットコラム

2007 クルマの豆知識

Vol.42「バイオガソリンとは?」

日本でも2007年4月末からバイオエタノール(植物から作ったアルコール)を混ぜたレギュラーガソリン「バイオガソリン」の販売が始まった。
果たしてユーザーにとって歓迎すべきことなのだろうか?
今後、ますます増えていくと思われるバイオガソリンについて紹介しよう。

まず日本で販売されている製品だが、バイオエタノールを加工し、ETBEと呼ばれる安定した液体にしたものを7%(純粋なエタノール換算だと3%)混ぜたもの。この混合比率ではエンジン本体に対し何ら問題ないとされている。ただガソリンより原価が高い。販売している石油会社にとっては、100%のレギュラーガソリンを売るより不利だと思う。

なんで損をしてまでバイオエタノールを混ぜるのか?
これはもう地球温暖化抑制への取組みに他ならない。御存知の通り、我が国は2008年までに地球温暖化ガスである二酸化炭素の排出量を1990年比マイナス6%にするという国際公約を行った。
しかし現在も二酸化炭素の排出量は減るどころか増える一方。

バイオガソリン 提供:石油連盟

そこに登場するのが植物由来のバイオエタノールである。サトウキビやトウモロコシに代表される植物は空気中の二酸化炭素を吸収し生育。そいつを使ってアルコールを生産すると、二酸化炭素はリサイクルされるという寸法。したがってバイオエタノールは二酸化炭素の排出量がゼロとなるのだ。
つまりバイオエタノールを3%混ぜた燃料なら、二酸化炭素の排出量も3%減らせるのである。

ここまで読むと「それなら6%混ぜれば目標を達成出来るのではないか」と思うかもしれない。
実際その通り。ブラジルのように100%バイオエタノールの燃料を使えば、国際公約など簡単にクリア可能。
なぜそうしないか?いくつか問題がある。最大のネックは価格。日本の場合、バイオエタノールも輸入に頼っているため、前述の通りガソリンより高い。加えて絶対的な量も足りない。日本で販売されるレギュラーガソリン全てに3%混ぜるとすれば、アルコールの供給量が追いつかず相場が急騰してしまう。
性能的な問題も無いワケではない。エタノールはアルコールより熱量が30%程度低いため、混ぜる量を増やしていくと燃費もパワーも低下する。3%の混合なら気にしないでいいものの、10%以上混ぜている国ではガソリンより安価に販売するのが普通。タイなどでもレギュラー1リッター当たり28バーツ(約104円)に対し26バーツ(約96円)で販売されてます。

今後どうするべきか?今のままだと石油会社が全て損失を背負わないとならない。
幸いバイオエタノールそのもののは、ガソリンの店頭価格(1リッター当たり53円80銭のガソリン諸税含む)より安い。当面はアルコールに対する減税を行うなど、優遇措置を導入すれば石油会社の負担が無くなり、普及していくことだろう。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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