国沢光宏のホットコラム

2007 モーターショー

Vol.38「モーターショーのジレンマ」

モーターショー

モーターショーに代表されるイベントが転換期を迎えつつあるようだ。一昔前ならコンセプトカーや新型車を展示するだけで、押すな押すなというくらいの観客を呼び込めた。しかし前々回の東京モーターショーあたりから明らかに入場者数は減少し、平日であればゆっくりと展示車両を見られる状態。クルマ好きとしては歓迎したいことながら、少なからぬ予算を組む出展者からすると費用対効果に問題が出てきてしまう。

一方、オートサロン(東京)やオートメッセ(大阪)のようなドレスアップカーやチューニングカー、モータースポーツ車両などを扱うイベントの人気が盛り上がっている。ここにきて海外からのメディアや観客まで増えてきた。以前はあまり興味を示さなかった自動車メーカーも、発売前の新型車を出展するなど意欲的。

東京モーターショーとどこが違うのかというと、派手さ。東京モーターショーの主催団体は『日本自動車工業会』。由緒ある団体だけに、様々な自主規制を作っている。ブース内で流す音楽の音量に始まり、イベントを盛り上げるコンパニオンの衣装に至るまで「お上品」じゃなければダメ。

かたや民間企業が主催するイベントを見ると、かなり緩い。よほど理解のある奥さんでない限り、家族連れで行くのは厳しいくらい刺激的である。もちろん法律に触れるような内容でこそないものの、いわゆる「ちょいワル」の魅力満載なのだ。
出展されている車両や部品もインパクトが大きく、クルマ好きにとって奥行きが深い。東京モーターショーを「建前」だとすれば、この手のイベントは「本音」なんだろう。実際、一度オートサロンに行けば、ほとんどの人が「また来年も見たい」と思うそうな。

普通、絶対見せて貰えないF1のダンバーとクラッチ

今後どうなるか? 危機感を持っているのは日本自動車工業会。何としても入場者数の減少に歯止めを掛けたいところ。けれどお上品でなければならない。このあたりのジレンマをどうするか。様々なアイデアを練っているようなので、2007年のモーターショーに注目して欲しい。
個人的に感心があるのは「次世代を担う環境技術」。今度の東京モーターショーにも各社から様々な技術が出てくるハズ。あまり知られていない事ながら、モーターショーで見られる『説明員』と書いたバッチを付けている人は、皆さん第一線のエンジニアだ。
聞きたいことがあったら積極的に質問してみるといい。営業の人より慣れていないため、つい本音も出る。もしナイショの話を入手したなら、ぜひとも情報を下さい。

民間企業のイベントは派手になるばかり。毎年のように強烈になっていく。まだ一度も見たことが無いなら、一度足を運んでみたらいかがだろうか? 強さに当てられるか、元気になるかのどちらか。少なくても「印象薄くつまらなかった」にはならない。

また海外のモーターショーの時期に旅行するようなことがあれば、ぜひとも見に行ってみたらいかがだろう。デトロイトやジュネーブ、フランクフルトといったモーターショーだけでなく、セマショー(ラスベガス)というオートサロンのような刺激的なイベントもあります。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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