国沢光宏のホットコラム

2006 クルマの豆知識

Vol.36「スタッドレスタイヤ vs スノーチェーン」

冬のドライブをする時に迷うのが「スタッドレスタイヤかスノーチェーンか」だと思う。

以下、様々な観点から比較してみたい。

雪道性能

最も脱着が容易なハシゴ (ラダー)型チェーンです。

初期の頃のスタッドレスタイヤは、主として坂道での発進性能やブレーキ性能でスノーチェーンに負けていた。
しかしスタッドレスタイヤの進化たるや驚くほど。今や雪道でもアイスバーンでもスノーチェーンを凌ぐ走行性能を持つ。
数少ない弱点が2輪駆動車(FF車など)の登坂性能。傾斜のキツい区間で停車し、発進するといった状況では依然スノーチェーン優勢。
国道や高速道路についてはスタッドレスタイヤでも問題ないけれど、グレードの低い道路になると厳しい場面も出てくる。
スキーや帰省などで高速道路や国道、幹線道路しか走らないというなら2輪駆動車でもスタッドレスタイヤで全く問題なし。
山間部に入っていくような使い方をする人はスノーチェーンが必要だと考えていい。

快適性

スタッドレスタイヤが圧倒的に優れている。無雪路での走行性能も違和感が少なく、何より雪道に出会った際、そのまま走れてしまうから有り難い。
スノーチェーンはどうか? タイヤに被せる『ネット型』ならガタガタしないので案外快適(ハシゴ型だと車体にガタガタした振動が伝わる)。
とは言え雪道を走る前に装着しなければならず、ブレーキもスノーチェーンを着けたタイヤしか効かない。
FF車で言うと、下り坂でブレーキを掛けたら前輪しか食い付かないということ。
速度を抑えて走らないとスピンすることもあるから注意。

価格

今や主役のスタッドレスタイヤです。

安価な金属製スノーチェーン(クサリみたいな形状)であれば3千円以下で購入可能。
ただビギナーだとタイヤに装着するのが難しい。
ベテランにのみすすめておく。
平均的な使い方なら脱着可能(といっても慣れないと時間が掛かる)なゴム製のスノーチェーンを推奨しておく。
おおよそ2万円程度。
スタッドレスタイヤはサイズによって価格が大きく違う。
大雑把な相場を挙げると、コンパクトカークラス用で5万円(ホイールも含む)。
2リッター級のミニバンクラスなら10万円といったイメージ。

寿命

スノーチェーンもスタッドレスタイヤも雪道だけの使用であれば5シーズン以上の寿命を持つ。
「減り」よりゴムの経年変化で使えなくなると考えていい。
けれど無雪路を走ると寿命が一気に短くなってしまう。
スノーチェーンで1500~2000km。
スタッドレスタイヤは1万5千~2万km程度。
例えば12月中旬から3月中旬までスタッドレスタイヤを履くと、平均的な走行距離の人で3年から4年が寿命だと考えていいだろう。
スノーチェーンは着脱が可能。
平均的な使い方をすると4~5年くらい使える。

判定

もし年間数回は雪道を走るというなら、コスト高になるものの安全で快適なスタッドレスタイヤを選ぶというのが最近の流れ。
2輪駆動車でキツい登り坂区間を走らなければならないのなら、スタッドレスタイヤ+スノーチェーンを使おう。
基本的に雪道は走らないが、万一の保険のために滑り止めを携行しておきたい、といった使い方であればスノーチェーンを推奨しておく。
使用頻度が限りなくゼロに近いという人は、ゴム製スノーチェーンの中でも脱着容易な「ハシゴ型」を。
使うとなれば長い距離を走る場合、脱着に時間が掛かる代わり快適性の高いネット型をどうぞ。
悩むのはその中間くらいの使用頻度。
雪が降る可能性の高い地域に住んでいて、1回でも雪道走行確実な場所にドライブする予定を立てているのなら、思い切ってスタッドレスタイヤを推奨しておく。
唯一の例外は年末年始のドライブ。
この期間中のみ高速道路でも一般路でもスノーチェーンを着けて走っている人が増える。

みんな同じ状況だったら、走行ペースも同じ。
そうそう。「スノーチェーンを装着したことが一度も無い」という人は事前に練習しておこう。
「装着しようとしたらスノーチェーンのサイズが違っていた」と言うこともけっこうあります。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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