国沢光宏のホットコラム

2016 メンテナンス情報

Vol.145「タイヤ選びのポイント」

クルマのメンテナンスで最も悩むのがタイヤ交換である。最もオーソドックスなのは新車時に装着されていたタイヤに交換するということだけれど、最近はディーラーですら違う銘柄を履かせたりすることも多い。カー用品店に行けば一段と多くの銘柄が並んでおり、これまた悩む。

こういったケース、本来なら自動車関連メディアなどで情報を得たいところながら、厳密なタイヤの比較テストの記事は皆無に近い。個別のタイヤの紹介記事であれば探せるものの、バイヤーズガイドというよりカタログの延長のような内容。競合するタイヤと比較は行っておらず。

その割に価格差が大きい。『195/65R15』というプリウスやミニバンなど多くの車種に採用されているサイズの場合、最も安価なタイヤは1本1500円(中国ブランド)。4本で6千円だ。一方、高価な国産のECOタイヤだと1本2万円近い。1本分の価格で10本以上買えてしまう。

価格差が大きく情報も無い商品を選ぶのは本当に難しいと思う。参考までに書いておくと、タイヤに表示されている性能の基準は二つ。『転がり抵抗性能』と『ウェットグリップ性能』である。この二つ、タイヤメーカーが勝手に表示しているのではなく、厳格な基準で評価されたもの。

いわゆる『ラベリング制度』*と言われる公的な証明で、安価な輸入タイヤは基本的に受けていない。逆に考えれば、ラベリング表示のあるタイヤは品質的な心配もしないでよいということである。もしタイヤ選びで迷ったら、ラベリング表示のある銘柄から選べば間違いない。

一般的にグリップ性能の高いタイヤは転がり抵抗が大きく、ECOタイヤになるとウェットグリップの評価が低くなる傾向。ここにきてECOタイヤでウェットグリップ『A』という素晴らしい銘柄も出てきた。おすすめしたいのは当然のことながらウェットグリップの高い銘柄。

プリウスに代表されるECOカーは、ウェットグリップを重視した上で、予算の許す限り転がり抵抗の少ない銘柄を選ぶと良い(両方良いタイヤほど高価)。ECOカーより悩むのがスポーツモデルや輸入車である。性能の低いタイヤを履くとクルマ本来の性能を引き出せない。

加えて各タイヤメーカーが松竹梅といったグリップ性能の銘柄を揃えている。幸い大手のタイヤメーカーであれば、それぞれのクラスでほぼ横並び。自分の好みのタイヤメーカーを選ぶのもよし、価格(値引き)で決めるもよし。このあたりはタイヤ屋さんにアドバイスしてもらうといいだろう。

難しいのが輸入格安タイヤ。極端に安価なタイヤをテストしたこともあるが、案外普通に走れてしまった。5年以上日本で販売されている台湾のブランドであれば、国産の半額くらいで同等のランクのタイヤが買えると思っていいだろう。いずれにしろ命を預けるものなのでジックリ選んで欲しい。

※ラベリング制度…「転がり抵抗性能」と「ウェットグリップ性能」を等級制度に基づく表示で行うこと。

<転がり抵抗性能 等級(昇順)>AAA/AA/A/B/C
<ウェットグリップ性能 等級(昇順)>a/b/c/d
転がり抵抗性能の等級がA以上で、ウェットグリップ性能の等級がa~dの範囲内にあるタイヤを「低燃費タイヤ」と定義される。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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