国沢光宏のホットコラム

Vol.24 CAR OF THE YEAR

第26回日本カー・オブ・ザ・イヤー『ロードスター』

年末になると『日本カー・オブ・ザ・イヤー』(以下COTYと略)というのが選ばれる。新聞や雑誌などでも盛んに取り上げられるため、御存知の方も多いことだろう。しかし具体的にどんな基準で選ばれているかという点になると、皆さん解らないと思う。以下、説明したい。

まず重要なのは「売れるクルマ選び」でないということ。もし販売台数を基準にするなら、基本的に軽自動車から選ばないとならない。長い間、日本のベストセラーカーは軽自動車のスズキ・ワゴンRなのだ。2位も軽自動車。そして3位くらいから白いナンバーの普通車が出てくる。「良いクルマ選び」とも違う。良いクルマという視点で選ぶと、どうしても高額車が有利。トヨタ・セルシオなど毎回受賞していいハズ。けれど高額車は初代セルシオが受賞しただけで、日産シーマもセドリック(現フーガ)もトヨタ・クラウンも受賞しておらず。「高性能車か?」となれば、これも当てはまらない。ホンダNSXや日産スカイラインGT-Rは2位に入ったことがあるが、1位を逃してしまった。これまた性能を重視するなら、毎年スポーティモデルばかりCOTYになることだろう。

初代日本カー・オブ・ザ・イヤー『ファミリア』

興味深いことに明確な選考基準というものも存在しない。50~60人程度の(年度によって増減あり)選考委員は、独自の基準でCOTYを選ぶ。性能で選んでいる人もいるし、楽しさを基準としている人もいる。けれど主流派は「その年を代表する技術やコンセプトを持つモデル」が多いように思う。例えば三菱ディアマンテが受賞した年を振り返ると「税制改正により3ナンバー車が解禁になった」ということを思い出す。初代セルシオは「世界と勝負の出来る初の日本車」だった。当然のように初代トヨタ・プリウスもCOTYを受賞。モデルチェンジで最先端の技術やコンセプトを打ち出してくるホンダのシビック&アコードなどはCOTYの常連である。

ちなみに私は選考委員になって16回。そのうちCOTYを受賞しなかったクルマに最高点を付けたのは5回(皆さんの意見と異なった、ということです)。例えば日産の社長がゴーンさんになり、お蔵入りになっていたフェアレディZを復活させた年に当然の如くフェアレディZを選んだ。そして今年の最高点はレクサスGSとした。10年後、レクサスは世界的に大成功を収めていると予想。そのスタートが今年だから、という理由である。自分で推薦したクルマがCOTYにならないと少々残念な思いはするけれど、今年受賞したマツダ・ロードスターも全く依存無し。COTYを受賞しても販売台数に結びつかない、という声もあるが、それでいい。COTYは文化としての自動車であり、商売じゃ無いからだ。毎年受賞式の時に見る、自動車を開発してきた人達の喜び方を見ていると「こういった賞も悪くないですね」と感じる。

”良い仕事”をしたら、やっぱりホメられるべきではなかろうか。実際、1台の新型車を世に出すまで早くて2年。エンジンや車台の開発まで含めれば4年も掛かる。その間、一生懸命やってきた人にとってCOTYは何よりの勲章。COTYに関わっていると「大人の涙というのも美しいものだな」ということを改めて認識します。