国沢光宏のホットコラム

2005 ラリー参戦記

Vol.23「ラリー・オブ・タイランド」

ラリーに出た実績の無い47歳のドライバーがアジア・パシフィック・ラリー選手権にシリーズエントリーした、なんてケースはWRCのTV解説をしている私でも聞いたことがない。凄いと言えば凄いけれど、実情は綱渡り状態。コースアウトして車体に大きなダメージを受けたらオシマイだし、それ以前の問題として1戦毎に「出られるか?」と大騒ぎしてるほど。

今回の『ラリー・オブ・タイランド』も、ラリー開始の数日前までコ・ドライバーさえ決まっていなかった。加えてラリーカーはレンタル(北海道が終わってから送ると間に合わない)。当然スポンサーなんか無し。サービスクルーだってマレーシアのチームの間借りです。面白いもので、それでもラリーが始まると何とかなってしまう。有り難いことにタイ在住の読者の方から「宿泊費とレッキに使うクルマを提供します」。ギリギリのタイミングでコ・ドライバーが決定(タイの人)。サービスも基本的に4人付いてくれるとのこと。初めて乗ったラリーカーは凄く乗り難かったものの、テスト走行の時間(2時間)で自分の好みにセッティングしたら、けっこうイケそうな雰囲気。タイの食事も安くて美味しいし……。

数少ない心配は新しいコ・ドライバーとのコンビネーションだけ。割と大雑把な性格なせいか、スタートの土曜日朝には「よ~し! 今シーズン最後のラリーだから気合い入れていこう!」と元気一杯である。

しかし! 始まってみたら不安的中。コ・ドライバーと息が合わず“最も危険な箇所”と事前にチェックしていたデコボコに、けっこうな速さで飛び込んでしまった。気づいた時は「空中」。ダメかと半分諦めたが、ラッキーにもコースアウトせず、車体のダメージも無し。ここでペースダウンすればよかったけれど、それじゃ勝負にならない。すると再びペースノート(コースの状態を書いたメモ。走行中に読んで貰う)の読み上げが遅れ、キツいカーブにハイスピードで進入。ブレーキが間に合わず路外に落っこちる。これまた運良く出てこられました。

午後になると、コ・ドライバーとのコンビネーションもググッと良くなって行く。面白いことに成績も付いてくる。1日目の最終SSは、何と6番手!私の上のドライバーを見ると、新井選手やアジパシのチャンピオンであるバリマキ選手、1秒差の5位が東南アジアのチャンピオン、サラディン選手。そして3秒差の4位にベテランのアーガイル選手といった具合。総合成績でもマーレー選手に迫り、グリーン選手の前(この二人、今シーズンの目標でした)である。サスペンションの関係で荒れた箇所はアクセル全開に出来ないことを考えれば、信じられない順位だ。このままゴール出来れば良かったのだけれど、最後から二つめのSSで気合い入れたらコースアウト。バーストしてしまい、グリーン選手に逆転されちゃいました。

結果はアジパシの7位で、またまた2ポイントを獲得。本来なら最終戦の『チャイナ・ラリー』もあるのだけれど、予算無く今シーズンのラリー活動、終了であります。応援ありがとうございます!

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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