国沢光宏のホットコラム

2017 クルマ&バイク情報

Vol.161「樹脂素材のフロントウィンドゥの可能性について」

樹脂製のフロントウィンドゥを採用した電気自動車トミーカイラ ZZ

自動ブレーキのセンサーなど取り付けるため、フロントウィンドゥが驚くほど高くなってきた。今や交換工賃込みで20万円というケースも少なくない。なのに飛び石一つで修復出来ない損傷を受けてしまうこともあるから心配だ。そんな不安を解消してくれるのが、2017年7月に解禁された樹脂素材。

今までフロントの窓についてはガラス素材しか認められていなかった(横や後部は樹脂でOK)。しかし新保安基準では透過性能や、耐摩耗性など一定の基準を満たせば使用可能。すでに『帝人』が航空機用ウィンドゥにも使われるポリカーボネイト製の自動車用フロントウィンドゥを供給している。

樹脂素材にはどんなメリットがあるだろう? 1つ目はガラスの200倍とも言われる「強度」。飛び石一つでひび割れしてしまうガラスと違い、割れにくい。だからこそ航空機にも採用されている。飛び石を受けても小さい傷しか出来ないため、容易に補修出来る(ガラスも場所とサイズによっては補修出来る)。

2つ目が「軽量化」。フロントウィンドゥは騒音防止などのため厚く&重くなっている。20kg近いフロントウィンドゥすら珍しくないほど。樹脂製なら同等以上の性能を持たせつつ半分以下の重量で済む。今や材料置換(素材を換えること)だけで10kgの軽量化が出来る部品など希少。

3つ目は価格。前述の通り高機能化によりフロントウィンドゥのコストは上がる一方。参考までに書いておくと、現在使われているフロントウィンドゥは全て「合わせガラス」。2枚のガラスの間に、飛散防止の薄膜を挟む構造である。その薄膜に、UVや赤外線カット機能を入れるため高価となってしまう。

樹脂なら簡易な構造で済む上、UVカットや赤外線カット機能を素材やコーティングで付加出来る。大量生産により、軽量かつ、様々な機能持たせたフロントウィンドゥを魅力的なコストで提供出来るようになることだろう。自動車部品の素材として考えれば、文字通り画期的と言ってよい。

さらなる発展性もある。スマートフォンやパソコンのタッチパネルと同じく様々な機能を持たせられることだろう。フロントウィンドゥ内側に表示されるヘッドアップディスプレイの多様化を始め、逆光など太陽光で前方視界が悪化した時の自動調光機能などあれば、安全性確保にも繋がる。

ガラス素材では実現出来なかったような曲面を持つカッコ良いデザインも実現出来ることだろう。そう遠くない将来、暗い道でも明るく表示し、道路上の危険因子をピックアップしてくれたりするなど、これまで考えられなかったような使い方が出来るフロントウィンドゥなど登場してくるかもしれません。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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