国沢光宏のホットコラム

2017 クルマの豆知識

Vol.160「クルマのエアコンの燃費への影響について」

「エアコンをつけたら燃費が悪くなる」と一般的に考えられている。特にハイブリッドなど、エアコンをつけることにより10%以上落ちると思っている人も少なくないようだ。本当にエアコンで燃費は悪化するだろうか?結論から書くと「極端に悪化するタイプから大差ないタイプまで様々」。説明しよう。

まずハイブリッド。あまり認識されていないことながら、エアコンから分類するとハイブリッドは2タイプある。従来のガソリンエンジン車と同じく、エアコンの冷気を作るコンプレッサーをエンジンで回すタイプと、モーターで回すタイプだ。前者のタイプは簡易型のハイブリッドと考えていい。

簡易型のハイブリッドは機能的に普通のガソリン車と大差なし。したがってエンジンが止まるとエアコンのコンプレッサーも止まってしまう。信号待ちが長いと徐々に冷房の温度が上がり、暖かくて湿った風しか出てこなくなる。ヌルくなって不快感を感じるくらいのタイミングでエンジンが掛かり、コンプレッサーが回る。

たとえば、信号待ちが少し長引くだけでエンジンが掛かるということ。こうなるとハイブリッドのメリットも少なくなってしまう。そんなことからエアコンをつけて信号待ちしているとハイブリッドの場合、大きく燃費を落とすことになる。東京都内のように渋滞が多ければ、10~20%程度落ちることも。

一方、停止時でも冷たい風が出てくるハイブリッドは、モーター駆動のコンプレッサーを採用する省燃費システム。このタイプのエアコンだとエネルギー消費量は少なく、外気温が30度くらいなら“ほぼ”燃費ダウン無し。35度になって5%程度の燃費悪化というイメージ。後者なら遠慮なく使いたい。

普通のエンジンを搭載している車種も(ディーゼルを含む)、エアコンが燃費に与える影響は無視して良いレベル。最近のエアコンに使われているコンプレッサーは抵抗が小さく、さらにアクセル開度の大きい加速時や登り坂などでコンプレッサーを自動的にカット。エンジンへの負担を減らしている。

ガソリンエンジン車で5%程度。エアコンの負担が大きい軽自動車であっても10%を上回って悪化することなど無し。燃費ダウンを心配しエアコンをオフにしても意味ない。むしろ熱中症の予防効果など考えたら、積極的に使うべきだろう。1年中エアコン入れていたって問題無し。

唯一、エアコンの使用で大きく燃費が落ちるのがアイドリングストップ付きの車。ハイブリッドのところで紹介した通り、エンジンが止まるとコンプレッサーも駆動できない。エンジン停止直後は冷房も冷えているため冷気は出てくるが、30秒もしたらヌルくなり不快感を感じてくるだろう。

自動車メーカーは「ヌルくなって不快感を感じる直前でエンジンを掛ける」という制御を行っているものの、やはり暑い日になるとガマン出来なくなってしまう。車内の広いミニバンなど、エアコンを止めたら室温が上昇し、なかなか冷えない。そんなことから、暑いとエアコンを止めないのである。

それならエアコンを使わない方がいいか、と聞かれたら「いいえ」。せっかく付いている機能なんだから使うべきだと思う。ただ外気温にして25度を下回ってきたら、窓開けた方が気持ち良い風が入ってくる。私は積極的に窓を開け、エアコン止めるようにしています。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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