国沢光宏のホットコラム

Vol.157 新燃費基準「WLTPモード」とは?

 「自動車のカタログに記載されているJC08モードの燃費は実際の燃費と違う」とよく言われるけれど、比較データなのでやむをえない面も持っている。

 例えば「性能比較のためAというサーキットのラップタイムを表示してよい」となった場合、自動車メーカーは一流ドライバーのタイムを表示するだろう。平均的なドライバーだと出ないタイムだ。「普通のドライバーを使えばいい」みたいな意見も出るだろうけれど「普通」という基準が難しい。

 燃費だって同じ。JC08という測定方法を定めてあるなら、当然の如く燃費走行の達人が計測を担当する。普通のドライバーだと不可能な燃費になってしまう。そこで2018年10月以降、状況を少しでも改善させるべくJC08に代わり『WLTP』という国際ルールの燃費基準を取り入れることになった。

 果たして実燃費に近づくだろうか?結論から書けば「JC08とあまり変わらない」ということになりそうだ。確かにWLTPはJC08より厳しい条件設定になっている。具体的に紹介すると平均速度や最高速度がJC08より高くなり、しかも加減速は急。アイドリングストップの時間も短い。

 日本車は平均速度や最高速度が低い走り方で燃費を出せる特徴を持っており、アイドリングストップでも燃料を節約。そんなことからWLTPを導入したら軽自動車など排気量の小さい車種や、ハイブリッド車に代表されるアイドリングストップで燃費を稼ぐ車種のカタログ燃費が落ちると言われている。

 どのくらい違うか?すでに国交省ではWLTPモードで燃費を計測しており、傾向も解っているという。概要を紹介すると、排気量が大きくアイドリングストップの付いていない燃費の悪い車種は若干向上。ハイブリッド車や軽自動車だと5%程度JC08より悪い燃費になるそうだ。

 しかしJC08と実燃費の乖離は30%とも40%とも言われている。5%低い数字になっても依然としてカタログ燃費と実燃費の差が縮まらない。だったらアメリカのようにカタログ燃費の7掛けくらいを『燃費』として発表すればいいと思う。40km/Lのプリウスなら28km/Lとなり実燃費に近い。

 ということでWLTP燃費がカタログに記載されるようになっても、実燃費と違う状況は続きそうだ。むしろWLTP方式の導入で大きなメリットあるのが自動車メーカーだろう。JC08はタイヤや空気抵抗の係数を実車で計測する。天気や気温に影響されるため、時間もコストも掛かってしまう。

 加えて燃費表示不正問題まで引き起こした。抵抗係数を少なめにすれば、燃費が良くなるからだ。WLTP方式だとタイヤや空気抵抗の係数は実車でなく計算や室内試験装置で出す。したがってデータも安定するし不正をしにくい。何より計測コストを大幅に削減しながら正確な数値を出せる。

 ということで少し改善されるものの、実燃費からは相変わらず乖離すると思われる。繰り返すが、全てのメーカーでアメリカのように達人ドライバーの燃費を7掛けした程度の数字を出せば限りなく実燃費に近い数字になると考える。