国沢光宏のホットコラム

2013 ドライビングテクニック

Vol.114「上級ドライバーに重要な素質とは?」

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右折などは判断の早さが必要

人間、生まれ持った「素質」というのがある。100mを9秒台で走れる人は、練習しなくたって11秒台を出せることだろう。けれど私なら学生の時でも11秒台など出せなかったと思う(練習しているウチに加齢で体力が落ちてくる)。運動に限らず、どんな事柄にも「センスや素質」はあるそうな。

運転にも「センスや素質」が存在するだろうか?これはもう明確に「あります」。F1やWRCに出場するようなドライバーは、初めて出場した競技から速かったという。興味深いことに、F1とWRC両方でチャンピオンを取ったドライバーはいない。なぜか?センスや素質が違うそうな。

100mとマラソンが得意な人は違う。それと同じこと。果たして運転のセンスや素質って何か?自分の運転技術向上のヒントになるかもしれないので一度考えてみたらいいと思う。まず運転に重要な感覚は大きく分けて「G感覚」と「車幅感覚」そして「反応速度」の3つ。

もう少し解りやすく書くと「前後左右のGを身体で感じそれを分析する能力」に「目から入ってくる情報の分析能力」。そして「そういった情報を速く演算する能力」だ。例えば速度の無い車庫入れなどは、目から入ってくる情報が全て。実際「距離」や「奥行き」の能力判定をすると、人によって異なる。

G感覚が鋭い人は、速度域が高くなってもクルマの状態を上手にコントロール出来るセンスを持つ。隣に乗っているとハッキリ解ると思う。例えばブレーキはジワッと踏み始め、その後徐々に強く。そして停車する前に段々緩めていく。加速やカーブでも同じ。いわゆる滑らかな運転が得意。

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縦列駐車は「目の情報」が重要

車幅感覚は縦列駐車や、狭い場所での取り回し、そしてバックした時の奥行き感覚などで重要になってくる。このタイプの人は細かい場所でクルマを動かすことを全く厭わないばかりか、むしろ嬉々としてこなすから面白い。クルマの運転にかかわらず、得意な作業や行動は楽しいのだろう。

反応速度が重要なのは、複数のクルマの動きを判断するようなケースだ。十分に行けるのに「待つ」人や、前のクルマに気を取られ、ナナメ後方のクルマは見落としているような人は、情報を入手して判断する速度が遅い。運転のセンスがある人から見ると「トロい」というイメージ。本人は一生懸命なのだ。

これらの感覚は人間の基本性能の1つである「反応速度」を除き、練習で相当カバー出来る。けれどタクシーなどに乗れば解る通り、走行距離が圧倒的に長いプロであっても前後左右方向の尖ったGを出す人もいれば、細かい路地で苦労している人も。やはり持って生まれた素質やセンスなんだと思う。

ということでアドバイスを。隣に乗る場合、車幅感覚の弱そうな人には車庫入れや狭い道で的確な情報をドライバーに与えてやるとよい。反応速度の遅いドライバーなら、急がせないこと。尖ったGを出してしまうドライバーは、無意識に速度を出しすぎることがあるので、その時は注意してあげるように心がけよう!

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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