国沢光宏のホットコラム

2012 クルマの豆知識

Vol.105「世界の交通事情」

仕事柄、様々な国でクルマの運転をする。当たり前のことながら、どんな国であっても「怖い」と感じたことはありません。人間の能力など世界共通。ある程度の技量さえ持っていれば全く問題無し。むしろ運転しやすい国の方が多いほど。日本の交通状況&マナーはいかがなものだろうか?

ヨーロッパの高速道路

結論から書くと、なかなか特殊である。まず交通の流れの速度。世界的な常識からすれば日本は遅い方である。高速道路の追い越し車線の流れは、イタリアやイギリスなど流れの早い国の平均が150km/h程度。遅い国で130km/hくらいだ。アジア地域で日本より遅い国はシンガポールと香港くらい。

アメリカは多くの地域で制限速度70マイルか75マイル。カルフォルニア州の高速道路なら80マイル(128km/h)くらいで流れていると思っていいだろう。また、我が国は高速道路だけでなく一般道の制限速度や流れる速度も遅い。世界の平均だと90km/h前後というイメージ。

絶対的な運転技量で評価するとどうか?日本は世界一難易度の高い教習システムを持つこともあり(教習所が無い国もある。街中で練習し、普通に運転できれば免許が発給される)、免許取得直後は「世界有数の技量」と言っても良かろう。

外国は免許を取得するとクルマを運転する機会が多く(例えばアメリカ)、しかも高い速度域(欧州)や厳しい道路事情(アジア)によって鍛えられる。免許を取得して1年後のドライバーの技量で評価したなら日本はレベルがすごく高いとは言えないだろう。高度なテクニックを要する縦列駐車などは、習っても使わなければ忘れてしまう?

日本の最近の特徴として「マイペースな人が増えた」と言われている。クルマ好きの減少により「上手な運転をしたい」という人より「周囲を気にしない人」が増えたのかもしれない。海外で高速道路の追い越し車線をノロノロ走ろうものなら、かなりのバッシングを受ける。というか誰でも認識している禁じ手。

タイの街中

また、日本の交通形態は自動車と自転車や歩行者を明確に分ける先進国型でなく、一緒に走る発展途上国型。ちなみに先進国型は歩行者優先ながら、人とクルマが同じ道を走るケースなどあまり無い。一方、発展途上国型は自動車優先となっているため、人が注意を払い案外事故も起きない。

混合交通なのに歩行者優先という国は日本くらい。事故を起こす可能性が高く、起こしたら厳しいペナルティを科せられる。ドライバーはかなり注意が必要となる。そろそろ日本も先進国型に見直す時期かもしれません。

興味深いことに事故防止効果の高い「自動ブレーキ」に代表される安全装置や、事故の状況を記録する「ドライブレコーダー」の急速な普及、世界有数の「任意保険」の加入率は、特殊な交通環境にある日本のドライバーにとっては必要不可欠な自己防衛策かもしれません。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

PAGE TOP