国沢光宏のホットコラム

2009 クルマ&バイク情報

Vol.61「米国BIG3の行方は? PartII」

100年に1度と言われる景気低迷を受け、土俵際に追いやられたビッグ3(GM・フォード・クライスラー)は今後どうなるのだろう?
考えられるシナリオを紹介したい。

会社更生法を申請

この中で何社が生き残れるか?

米メディアの調査によれば、国民が最も望んでいるのは「倒産」である。

『チャプター11』(米連邦破産法第11章)と呼ばれる日本で言う会社更生法なら、会社そのものを残すことが可能。例えばノースウエスト航空なども破綻し、チャプター11で現在運営されてます。問題点は三つ。チャプター11となれば、ビッグ3の借金が基本的に全て免除されてしまう。ビッグ3にお金を貸している企業や部品メーカーも資金を回収出来なくなり、連鎖倒産を引き起こしてしまう。莫大な負債金額のため、その影響たるや極めて大きい。

米政府はこの余波を恐れている。

二つ目が頑強に反対している労組。アメリカの自動車労組(UAW)は世界最強だ。

チャプター11だと今までの恵まれた雇用契約も一旦白紙になってしまう。ちなみにノースウエストの破綻は従業員の給料が高かったためで、破綻後に大きく引き下げられた。

UAWからすれば飲めない条件だと思う。

三つ目に「チャプター11の後をどうするか?」。今まで通り燃費の悪いクルマを作っていたら、またしても破綻してしまう。当然ながら経営陣を一新し、日本のメーカーなどに技術協力してもらわないと無理。その枠組みをどうするか決めなくてはならない。

会社清算法を適用

ビッグ3は中国市場に期待している

リーマンブラザーズのように『チャプター7』(会社そのものを解体する)を適用すべきだという意見が日増しに強まっているという。つまりチャプター11だと再び破綻する可能性があるので、お金のムダ使いでしかない、というもの。
実際、チャプター11の問題点の3番目を完全に解決しない限り、ビッグ3は何度も破綻すると分析されている。航空会社なら運賃を下げればお客が増え、商売として十分に成り立つ。けれど前回のコラムで書いた通り、ビッグ3は安売りをしていても販売台数が減ってきていたのだ。
チャプター7であればビッグ3の資産(工場やディーラーなど)を日本の自動車メーカーに販売することにより存続可能。クルマも性能の良い日本車仕様になる。例えばGMはトヨタ系列、フォードがホンダ系列に、などということ。

政府主導で再建を目指す

欧州勢もハイブリッド技術を開発し、アメリカ市場を狙う

ブッシュ大統領は破綻させることも出来ず、かといって抜本的な解決策を打ち出すことも出来ず、単に運転資金を税金から出すという「一時凌ぎ」でオバマ政権にバトンタッチすることになった。米国の世論が最も憂慮している状況。
このままだと資金不足になる度に税金を投入するしかないからだ。
しかし最近「チャプター7とチャプター11を組み合わせる」という説も出てきた。効率の悪い部門は清算。
改善により収益を見込める部門のみ残すという内容。
前者の代表がUAWの勢力下にある工場。ディーラーについていえば、売れる商品さえ揃えば収益は上げられます。
いずれにしろビッグ3の低迷は今回の不景気の根っこみたいなもの。夏くらいまでに結論が出ると思う。

さて。ビッグ3が破綻したらどうなるか?言うまでもなく大混乱になること必至。ただ前述の通り日本の自動車メーカーは何らかの方法で援助をすることになるだろう。もちろん見合った報酬も入ってくるから、長い目で見れば良い方向へ向く。
欧州も同じ。GM系列のオペルとサーブ、そして欧州フォード、ボルボがどこかのメーカーに吸収&統合される。
大混乱を生き残ったメーカーは、より強くなるということです。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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