国沢光宏のホットコラム

2004 メンテナンス情報

Vol.6「ホイール脱着の危険性」

ホイールの脱落事故はトラックだけだと思っている人も多いだろうけれど、乗用車だって珍しくない。先日も上信越道のトンネル内で発生したSUVのホイール脱落を知人が目撃している。幸い無事だったものの、一歩間違えれば重大事故になったと思う。軽自動車のホイールでさえ対向車のフロントガラスに飛び込んだり、歩行者と衝突すると大きなダメージを与えてしまう。なぜホイールの脱落は起こるのか?原因の大半を占めるのが、ホイールナット(ボルト)の緩み。 スタッドレスタイヤと夏タイヤを交換したり、タイヤのローテーションした時などに締め忘れるのだ。私自身、ナットをしっかり締めていないクルマのハンドルを握った経験を持つ。

説明書によるとレガシィの締め付けトルクは50kg。締め付けが弱すぎるのは危険極まりないが、あまり強すぎるものよくない。

アメリカで試乗用のクルマを借りた、と思って欲しい。最初は全く問題なかったものの、30Kmくらい走った後、たまたま窓を開けたら「ちちちちち」という何か妙な音がしていることに気づいた。 オーディオのボリュームを普通の状態にし、窓を閉めていたら全く解らない程度の音だ。ハンドルに伝わってくる振動も皆無に近い。仕事柄クルマの音や振動には敏感なのでチェックしてみたら、その時点で右後輪のホイールナット全てゆるゆる。4本あるうちの2本は、5~6回転回っているではないか!

本当に驚いた。もちろんホイールボルトに傷も付いており、この状態でカーブなど曲がったら折れてしまうこともあったかもしれない。

なぜこんな状況になったか確認したら「ホイールを付ける際、指でナットを締め込み、 増締めしなかったようです」。他の3輪はしっかり締まっていたから、完全なミスだったようだ。 さらに緩めばもっと大きな音や振動が出てくるのかもしれないが、前述の通り私のケースでは非常に解りづらかった。以前ホイール脱落を経験した知人によると「タイヤが自分のクルマを追い抜いて行くまで解らなかった」そうな。 読者諸兄も「明らかな予兆」あると思わないで欲しい。どんな些細なものでもいいから、いつもと違うような音や振動を感じたらなるべく早く安全な場所を見つけて停車。 4つのタイヤの確認(パンクの場合もある)しよう。異変を認知出来なかったとしても以後、注意して走行すること。

基本的には取り扱い説明書を参考にしてください。

こう書くと「思い切り締めればいい」と思ってしまう人も出てくるが、それも危険。締めすぎればボルトに負担を掛けてしまい、これまた折れる原因になる。 また、インパクトレンチなどで強引に締めると、パンクした時に車載工具でタイヤを交換出来なくなってしまう (こういったケース、よくあります)。パンクなど緊急時のタイヤ交換については取り扱い説明書に書いてあるので作業する前に御一読を。正式な方法は軽く締め、それから対角線上のナット(ボルト)をレンチで締め込んでいく。最後はトルクレンチという工具を使い、規定の締め付けトルクを掛けるというもの。 規定値で締めれば車載工具でナット(ボルト)は緩みます。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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