国沢光宏のホットコラム

2012 クルマ&バイク情報

Vol.98「クリーンディーゼル車の実力」

マツダCX-5

今まで燃費の良いECOカーと言えば、ハイブリッドカーかコンパクトカーだった。しかし、ここにきて新世代のディーゼルも有力な候補になりそうな流れになってきている。なぜディーゼルなのか?ボディサイズが大きいクルマなら、ハイブリッドより燃費が良いからだ。

長い間、ディーゼルは「排気ガスのクリーン度」に問題を抱えていた。船舶や建設機械など産業用ということで容認されてきたものの、乗用車のように台数が多く、身近な存在だと深刻な大気汚染を招く。そこで日本やアメリカでは事実上禁止になるほど厳しい排気ガス基準が定められていた。

こう書くと「ヨーロッパはなぜディーゼル車が多いのか?」と思うことだろう。ヨーロッパも厳しい排気ガス規制を行うハズだったが、自動車メーカーの強硬な反対にあって大幅に緩い内容になってしまった。現在の『ユーロ5』という規制の内容は、日本だと2005年施行の『新長期規制』と同等程度。

ちなみに現在の日本はガソリンエンジンと全く同じクリーン度が必要な『ポスト新長期規制』となっており、ヨーロッパで2015年から始まる『ユーロ6』とほぼ同じ厳しさである。排気ガスのニオイは全くせず、空ぶかししても黒い煙などは見えない。今までのディーゼルエンジンと別物です。

エクストレイルの燃費メーター

日産は2009年に世界一厳しい日本のポスト新長期規制をクリア出来るディーゼルを発売したものの排気ガス浄化装置のコストダウンが出来ず、同じクラスのガソリンエンより大雑把に言って55万円くらい高価になってしまう。ここまで高いと気軽に買うことも出来ず、伸び悩んでいた。

だからこそハイブリッドやコンパクトカーの陰に隠れ、目立たなかったのだ。ところが2月に発表されたマツダCX-5のディーゼルは業界の常識を打ち破る価格設定をしてきたのである。ガソリン車との差額38万円。しかもクリーンディーゼルの補助金はガソリン車の補助金より8万円多い。

さらにガソリン車だと75%減税の取得税や重量税までディーゼルなら100%減税。これらの優遇措置を合計すると、ガソリン車との金額差は25万円程度に縮まってしまう。一方、燃料コストという点から評価すると、圧倒的に燃費が良く、ガソリンより安価な軽油を使うディーゼルの優位性が際だつ。

前述のエクストレイルの場合、ガソリンエンジンで10km/Lくらいの条件であれば、ディーゼルだと15km/L前後走る。加えて軽油はガソリンより20円前後安い。走行1万kmあたりの燃料コストを計算すると、ガソリンが15万円。ディーゼル8万6千円。6万4千円安く付く。

25万円の価格差なら4万km走るだけでモトが取れてしまう。4万km以降は1万km毎に6万4千円分ずつ得をする計算。ガソリンとディーゼルの価格差が30万円以内になれば、イッキに普及することだろう。今後、各社からディーゼルエンジン搭載モデルが出てくると思う。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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