国沢光宏のホットコラム

2011 モーターショー

Vol.85「活気を取り戻したデトロイトモーターショー」

昨年のデトロイトショーを思い出すと暗いニュースばかり。海外勢の欠席やGMの破綻などのため、展示スペースの空きも目立った。アメリカの凋落をそのまま反映したようなイメージ。しかし今年は全く状況が違う。開幕日のFOX(アメリカのTV局)などを見ても、モーターショーのニュース一色。

GMシボレーの新型車『ソニック』

なぜか?アメリカの自動車メーカーはクライスラーを除き復活の兆しが明確に見え始めたからだ。例えばアメリカ最大のシェアを誇るGM。破綻を機に会社の方針まで大幅に変更している。フォードにも共通することながら、長い間、アメリカ市場だけ見ていれば何の問題もなかった。

しかし日本に代表される他の国は美味しいアメリカ市場を放っておくワケないが。 結果、この10年で徐々にシェアも奪われ始めた。加えてアメリカの 1.5倍の市場規模に育った中国やブラジルなど新興国市場で勝負していかないと、ジリ貧になってしまう。破綻後、GMは心機一転まき返しを計った。

デトロイトショーで発表されたクルマを見て驚く。これまでやる気を感じなかったフィットやヴィッツ級のクルマを真剣に作ってきたのである。『ソニック』と呼ばれるモデルは、このところ急速に台頭してきた韓国の大宇自動車と共同開発したという。写真を見ていただければわかる通りカッコ良い。

LGケムのリチウム電池

しかもGMの援助により、完成度も相当なレベル。参考までに書いておくと、フォードのコンパクトカーである『フィエスタ』の売れ行きだって好調。ソニックのデビューで日本勢の優位性が大幅に薄れたと考えていいだろう。もちろんコンパクトカークラスには現代自動車も新型車を投入予定。

電気自動車だって猛追を受けている。韓国のLGケムという電池メーカーは、世界トップと評価されている日産NECの電池に性能で並び、さらに高い価格競争力を持つことがデトロイトショーで判明した。このままだと電池も半導体や液晶と同じく厳しい状況に追いやられる可能性大。

トヨタの新型ハイブリッド車
『プリウスC』

もちろん日本勢も何とか存在感を見せようとしている。トヨタは10・15モード燃費で44km/Lを開発目標にしているヴィッツ級のハイブリッドと、プリウスベースのワゴンモデルを出展し、注目を浴びていた。でも日本勢で元気なのはトヨタのみ。日産など今年も参加しておらず。

また、今年から中国の自動車メーカーである『BYD』がデトロイトショーで本格的にデビューしてきた。韓国に続き中国もアメリカ進出を果たすということなのだろう。そろそろ日本も反攻を考えなければならないタイミングになってきたと思う。少しばかりぬるま湯に入っている時間が長かった?

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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