国沢光宏のホットコラム

2008 クルマの豆知識

Vol.49「駆動方式の基礎知識」

乗用車には一般的に『FF』と呼ばれる前輪駆動車と、後輪駆動車(クルマ好きは『FR』と呼ぶ)、そして4WDという3タイプの駆動方式が存在する。最新の傾向を含め、改めて紹介してみたい。

FFなら駆動ユニット全て短いボンネットで完結可能

まず前輪駆動車から。
一世代前まで「コーナリングが良くない」とか「エンジンの振動をハンドルに伝える」みたいな弱点もあったけれど、今やタイヤや電子制御技術の進化などにより、ほとんど解決済み。

一方、エンジンや駆動系を全てフロント部分に集約出来るため、車内スペースを広く確保出来るという大きなメリットはキッチリ持つ。生産コストや軽量化など含め、間違いなく今後も駆動方式の主流になるだろう。

クラウンやレクサス、ベンツといった高額車を見ると、後輪駆動を採用しているのはなぜだろうか?これはもう5千円のワインと3万円のワインの差みたいなもの。

「解る人なら解るし、解らない人も多い」。
具体的に書くと、アクセルを踏みながらコーナーを曲がるときの手応えや、全開加速時の安定感などで差は出てくる。
ハンドルに伝わってくる振動も前輪駆動車よりマイルド(上質、と表現してもいい)。
また、高額車は大馬力のエンジンを積むモデルもラインナップすることが多いのだけれど(ベンツSクラスやBMW7シリーズだと400馬力超のエンジンをラインナップ)、タイヤの性能が上がった今でも、300馬力を少し超える出力までが前輪駆動車の物理的な限界だと言われている。
といった理由で、現在販売されている新型車を見ると、300馬力に満たないエンジンを搭載するクルマはスポーツモデルを除き基本的に前輪駆動だと考えていい。

ただし一つだけ克服出来ない弱点を持つ。雪道性能だ。
あまり知られていないことながら、日本の雪は世界一滑る。
なのにスパイクタイヤ禁止になってしまった。
世界一優れた性能を持つと評価されている日本製スタッドレスタイヤを履いていても、一定以上の登り坂になってしまえば前輪駆動だとお手上げ。特に登り坂からの発進が難しい。

馬力の大きいスポーツカーは4WD有利

そこで登場するのが4WDだ。
4つのタイヤに駆動力を伝えてやると、キツい坂もスイスイ登るようになってしまう。
ちなみにこれだけ数多くの乗用車用4WDを選択出来る国は日本を除き存在しない。
逆に考えると、雪道や悪路を走らない限り4WDの必要性は享受出来ないワケ。
むしろ前輪駆動車より高額になり、車重が増えるため燃費も悪くなるなどデメリットの方が多くなってしまう。

燃費が悪くない4WD車

「4WDの方が上等」みたいなイメージで選ぶのは間違いです。
数少ない例外はスバル車である。最初から4WDとして設計されているため、車重も価格もライバルの前輪駆動車と変わらず。
加えて実用燃費まで良い。スバル車に限り、4WDの弱点は気にしないでよかろう。

今後どうなるだろう。
ECOの時代になると、基本的に小型&軽量化が必要。
必然的に前輪駆動主流になっていくと考えていい。
ただ雪道だけはECOの時代だって4WDでなければ歯が立たない。
燃費の良い4WDなら残ると思う。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

PAGE TOP