国沢光宏のホットコラム

2006 クルマの豆知識

Vol.34「LPガスとクルマの良い関係」

普段気づかないLPGスタンドですが、けっこう多いです。

御存知の通りタクシーは燃料にLPガスを使っている。
なぜかといえば、燃料コストがガソリンに比べ圧倒的に安いからだ。
2006年9月現在の平均ガソリン価格は1リッターあたり144円前後。
LPガスの場合、77円前後と約半分で済む。
正確に言えば、ガソリン仕様より燃費が20%程度悪くなるため、実質的に約30%くらい燃料コストを節約出来ると考えればいい。
リッター100円くらいをイメージしてもらえば間違いないと思う。

ガソリン高騰の折、LPガスの安さを知っている人から「自分のクルマも次はLPガス仕様にしたいのだけれど」といった質問を受けることもある。
そんなこと出来るのか?
意外なことに可能なのだ。LPガススタンドに行けば普通の人でも充填してくれ、価格だって決して高くない。
実際、タクシー用として使っていたクルマに乗っている人や、普通のガソリン車をLPガス仕様に変更して乗っている人もいます。ただ様々な制約があるので御注意を。

まずコスト。LPガス仕様への改造費は思ったより高価。
エンジン関係の変更費用こそ高くないものの、LPガスを貯めておく高圧タンクなどが高く、1500~2000ccの4気筒エンジン車で30~50万円くらい掛かってしまう。
改造したコストを回収しようとすれば、2リッタークラスで10万km以上走らなければならない。
ちなみにタクシーは50万km以上走るため、LPガス仕様にしても余裕でモトが取れる。
もし10万km以上走るというなら、LPガス仕様のメリット大。

たまに街道沿いにガソリンスタンドみたいなモノもあります。

二つ目のハードルはLPガススタンドの数。
ガソリンより大きな規模の充填装置を必要とするため、数が少ないのだ。皆さんLPガスのスタンドを見たことあるだろうか。
タクシーなら同じ車庫から出て同じ車庫に帰ってくるし、走る地域も広くないためLPガスのスタンドが少なくても困らない。
しかし乗用車だと困ってしまう。例えばスキーなどでLPガススタンドの無い地域に行き、ガス欠となれば厳しい(最近、LPガスとガソリンの両方を使えるシステムもある)。

三つ目がLPガスタンクの大きさ。高圧タンクということもあり、大きな円筒型のタンクを搭載しなければならない。
4ドア車ならトランクの3分の1くらいを占拠(タクシーのトランクはクラウンであっても海外旅行用トランクを積めない)。
ステーションワゴンやミニバンも、乗員スペースか荷物をスペースを削らないとダメ。

以上三つの弱点さえクリア出来れば、LPガス仕様はメリット大。
ディーゼルと違い排気ガスもガソリン車と同等にクリーン。環境にやさしいエンジンなのである。
ちなみにLPガスとは「液化石油ガス」の略。
家庭用で使われるLPガスや、ガス式ライターに入っている液体と全く同じで、プロパンとブタンが主成分になっている。
常温では気体なのだけれど、圧力を掛けると液体になるという特性を持つ(大気中ではシューという音を出して瞬時に蒸散)。
もし営業車などで年間5万kmくらい走るというなら、3年以上使うとコスト的に有利です。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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