国沢光宏のホットコラム

2020 クルマ&バイク情報

Vol.192「コンパクトカーと軽自動車の違い」

今年に入りトヨタからヤリス、ホンダが新型フィットを発売し、いずれも人気となっている。この2車種に限らずコンパクトカーは各社揃って売れ行き好調。しかし使い勝手を考えると、軽自動車というチョイスもあると思う。例えば新型フィットの場合、同じホンダのN-BOXという軽自動車と、ほとんど同じくらいのキャビンスペースだ。

車両価格や実用燃費も良い勝負。ヤリスでいえば、系列メーカーのダイハツ・タントと比べ、キャビンスペースは明らかに狭い。それでいて価格を見ると同等。ホンダもトヨタも、コンパクトカーのランニングコスト(税金や保険、整備費用)は軽自動車の2倍程度。自動車税もコンパクトカーの年額3万4500円に対し軽乗用車は1万800円で安い。

駐車スペースだって取らない。だとしたら、コンパクトカーより軽自動車を買った方が得ということになります。けれど販売状況を見ると、コンパクトカーを選んでいる人も少なくない。なぜランニングコストまで含めたら割高になってしまうヤリスやフィットを選ぶ人がいるのだろう。以下、軽自動車とコンパクトカーの違いを紹介する。

まず軽自動車で最も不安な衝突安全性。日本の公的な衝突試験を行っているJNCAPの試験データを見ると、衝突基準が厳しい海外でも販売されているコンパクトカーは、平均レベルで優れた性能を持つ。ただ軽自動車でもホンダの新型車は数値をみると、コンパクトカーの平均値を超えている。

つまりコンパクトカーは平均して良いのに対し、軽自動車の場合、未だにサイド&カーテンエアバッグが付いていないモデルもあるなど、まちまち。性能の良い軽自動車を選ぶなら、衝突安全性や自動ブレーキ性能はコンパクトカーと遜色無いと考えていい。軽自動車、選ぶモデルで安全性能は大きく変わるということになる。

燃費を比べると、コンパクトカーと軽自動車で良い勝負。街中で12km/L。流れの良い道で18km/Lといったイメージ。ただ軽自動車のターボ車は30%くらいパワフルになる反面、20%くらい燃費が落ちる。コンパクトカーだと圧倒的に燃費の良いハイブリッドカーを選べるものの、普通のエンジンより30万円ほど高くなります。

文頭に書いた通りキャビンスペースは選ぶ車種によって違うが、平均値で比較すると明確に軽自動車が優勢である。ヤリスやマツダ・デミオなど、リアシートに大柄な男性が座ろうとしたら窮屈だ。背高の軽自動車だと、どのメーカーのモデルであっても余裕だ。背高の軽自動車と互角に勝負出来るのは新型フィットくらいだと考えてよいだろう。

以上、物理的にコンパクトカーと軽自動車を比較すると、後者が優勢になる。ただ自動車という“道具”は文化的な要素も重視される。高速道路を走った時の安定感や、カーブを曲がった時の気持ちよさ、数字に現れない余裕など、様々な「乗らないと解らない差」があると思う。購入するならぜひとも両方のジャンルを乗り比べることをすすめます。

  • トヨタ ヤリス

  • N-BOX

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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