国沢光宏のホットコラム

2019 モーターショー

Vol.186「新生東京モーターショーについて」

「海外の大手自動車メーカーがメルセデスとルノーしか出展しない」ということから、今年の東京モーターショーに対し厳しい記事も多くなってきた。確かに今までの「海外の出展社数で規模を評価する」というモーターショーの基準からすれば非常に寂しい。フランクフルト、パリと並ぶ世界の3大モーターショーと言われていた時代は”ほぼ”全ての大手自動車メーカーが揃ってました。

東京モーターショーの入場者数を見ると、回を追う毎に減少。前回の2017年などリーマンショックの前の2007年と比べ半分の77万人まで落ち込んでしまってます(最多入場者数は1991年の201万人)。モーターショーの存続すら危ぶまれる状況を見て、自動車工業界の豊田章男会長は「モーターショーの衰退は自動車産業にとって大きな課題だと思います」と問題提起したという。

考えてみたら年頭に開催される東京オートサロンは毎回入場者数を増やしており、2019年の場合、会期3日間で過去最高の33万人。大阪オートメッセも3日間で26万人を集客している。いずれも単独企業の主催だ。世界に冠たる日本の自動車企業全てが出展し、12日間に渡って開催される東京モーターショーの77万人は、自工会会長の言う通り「もっと良いアイデアがあるのでは?」と思う。

東京モーターショー 2019 イメージ図

そんな経緯があり、今回の東京モーターショーは1年前から危機意識を強く持って準備がすすめられてきたという。例えば「モーターショーなのにフェラーリやランボルギーニといった華やかなクルマを見られない」というたくさんの不満に対して、主催者は『日本スーパーカー協会』へ協力を依頼した。具体的な展示車種についての発表こそないけれど、凄いことになりそう。

あまり認識されていないが、我が国は世界有数のスーパーカー保有国である。世界に数台しかないというレベルの希少モデルも多数。出展車リストを見たら「凄い!」と思うかもしれません。はたまた前出の『オートサロンブース』という、アメリカやアジアで絶大な人気を持つカスタマイズカーも多数展示されるコーナーもあり、これまた人気を集めそう。この2つだけで「見たい」と思ってしまう。

ドライブパーク

さらに「ドライブパーク」では、輸入車を含む実車の同乗体験(ドライバーは日本自動車ジャーナリスト協会の腕利き)や、2輪車の試乗、はたまたドリフト同乗試乗といった、体験型イベントを行う。電動キックボードや超小型モビリティを気軽に試乗させてくれるコーナーも。将来のクルマファンに向けキッザニアと提携した「子供達が働く街」まで作るというから盛りだくさん。

従来の「会場に展示してあるクルマを眺める」だけのモーターショーから体験型のモーターショーに大きく舵を切る。今度の東京モーターショーのような「新しい価値観のモーターショー」が成功したら、観客数の減少に悩むフランクフルトやパリ、デトロイトなども、体験型のお祭りのようなイベントになっていくかもしれない。といった意味では大いに楽しみだ!開幕は10月25日~11月4日。東京ビックサイトです。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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