国沢光宏のホットコラム

2018 クルマ&バイク情報

Vol.174「自動運転の実用化、2020年までに実現なるか!?」

政府は自動運転の実用化を2年後の2020年としている。果たして実現出来るのだろうか?一番可能性があるのは、東京湾岸に点在する競技会場やプレスセンター、選手村など集中する青海~豊洲~夢の島あたりで人や物資の移動手段として運用することだと思う。詳しく紹介してみたい。

まず人の移動。すでにタクシー大手の日の丸交通が自動運転技術を得意とするZMPと組み、大手町から六本木ヒルズまで自動運転のタクシーを運行させている。また、日産自動車も横浜のみなとみらい地区で無償ながら一般公募の人を乗せ、自動運転の実証試験を行うなどしてます。

日産の自動運転実証試験車

取材で日産の実証試験車に試乗してみた。日産のグローバル本社から出発し、信号での右左折をしながらワールドポーターズという商業施設までスムーズに到着。安全確保のためドライバーが運転席に座っていたものの、一度も『手助け』しないまま目的地に到着した。取材した時は無人で問題無かったと思う。

日の丸交通の自動運転タクシーは交通量の多い区間ということもあり、運転席に座っているドライバーが『手助け』することが少なくないようだけれど、ノウハウを積み重ねることで徐々に精度を上げて行けると思う。2年すれば、『ほぼ』自動運転出来るようになるかもしれない。

ただ、本当の意味での自動運転が実現するかとなれば、難しいと考える。ということで落としどころは、通常の位置に運転席を作らない自動運転車か?つまり、見た感じは無人ながら、どこかに乗員が乗っており緊急時はアシストするというタイプ。このタイプの小型バスなど実用化する可能性大。

人を乗せる無人の完全自動運転は、空港などで実証試験を想定しているようだ。空港の場合、歩行者といった危険因子が少なく、他の車両も制限速度や法規を厳守して走っている。空港ターミナルと沖止めになった(ボーディングゲートがなくエプロンに駐機するケース)機体の往復なら危険性は少ないだろう。

物資の輸送は最も自動運転に向く。トヨタが提唱している「eパレット」という自動運転車を見ると、夜間など交通量の少ない時間帯を比較的低い速度で移動することが出来る。遅いと言っても20km/h程度出れば、狭い湾岸地域だと1時間でどこにでも荷物を届けられることだろう。

もちろん人の移動にも使える。専用レーンを作り、そこを自転車程度で走らせることで安全性を担保出来る。20km/hなら停止距離2m。複数のセンサーを組み合わせることで、どんな障害物も発見し緊急停止させられます。ゴルフ場の自動運転カートに100倍の安全性を加えたと思えば間違いなし。

皆さんイメージする「タクシーやバスの代わりになるような完全自動運転車」を実現させようとすれば、技術だけでなく事故をおこした時の法律なども定めなければならず、相当の時間を必要とするだろう。けれど人間の監視下に於ける運行や、ゴルフ場のカートの延長なら2020年に十分実現すると思う。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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