国沢光宏のホットコラム

2018 クルマ&バイク情報

Vol.168「近年のディーゼルエンジン車について」

スカイアクティブDを搭載しているCX-8

ディーゼルエンジンに対する向かい風が世界規模で強くなってきた。ここにきて新しいディーゼルエンジンの開発を凍結すると言い始めるヨーロッパのメーカーすら出ているほど。日本の自動車メーカーの場合、マツダを除き基本的に後ろ向きだ。今後ディーゼル車の将来はどうなるだろうか?

まずディーゼルエンジンの「世界地図」を見ると、ヨーロッパ市場が最も大きい。続いてアジアとインド(この地域、大気汚染の深刻化により、ディーゼルエンジンより電気自動車の普及に熱心)。アメリカ市場を見ると、ディーゼルエンジンのニーズは大型のピックアップトラックの一部のみ。

ということでヨーロッパ市場がディーゼルエンジンに見切りをつけ始めてきたことを考えると、他の地域も縮小の方向になると思ってよい。なぜ見切りをつけるのか?巷で言われているのは「排気ガスのクリーン度に問題を抱えているから」。もちろん最新のディーゼルならガソリンエンジンと同等のクリーン度を持つ。けれど最近のディーゼルエンジン離れの状況を見ていると、自動車メーカーは排気ガス問題に対し反論していない。実際、クリーンディーゼルに弱点も存在する。例えば「チョイ乗りを繰り返すとススが溜まって調子が悪くなる」というもの。ディーゼルエンジンの構造上、どうしてもススを出す。

ススはフィルターでキャッチし、一定量溜まった時点で燃焼させ処理している。けれど10分以内の短い運転を繰り返すとススの燃焼が間に合わない。結果、ススを詰まらせ、酷いとエンストしてしまう。この症状に対する有効な対応策は「1週間に一度は30分以上連続して運転する」。

一昔前のディーゼルエンジンであれば全く気にしないで扱えたものの、クリーンディーゼルは少しばかり注意が必要なのだ。加えて最近ガソリンエンジンの燃費も大幅に向上してきた。例えばハイブリッド車なら、ディーゼルエンジンより燃費良い。世界的にハイブリッド車のタクシーが急増しているほど。

そんな中、日本の輸入車市場はディーゼル車が人気になっている。ヨーロッパメーカーの多くはディーゼルエンジン車をラインアップし、販売も好調。車種によって販売台数の半分以上がディーゼルエンジンというケースだって珍しくない。買うのを控えるべきだろうか?

現在日本で販売されているディーゼルエンジン車のマフラーの内側は写真のようにクリーン

この点に関しては「いいえ」と答えておく。現在日本で販売されているディーゼルエンジン車はガソリン車と全く同じレベルのクリーン度を持つ。試しにディーゼルエンジン車のマフラーの内側をティッシュなどでぬぐってみて欲しい。ガソリン車よりススが付かないほど。

もちろん「チョイ乗りを繰り返すとススが溜まる」という特性は持っているため、短距離移動の多い使い方には向かない。そもそも走行距離が短いなら、車両価格の安いガソリンエンジンをすすめておく。走行距離の多い使い方なら、むしろ燃費の良いディーゼルエンジン車をすすめておく。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

PAGE TOP