国沢光宏のホットコラム

2017 ラリー参戦記

Vol.154「ラリー参戦記2017 ~キングスカップ~」

1月でも気温34度に達するタイのペチャブーン(バンコクから北東へ300km)というところで、御逝去されたタイ国の前国王の賜杯が掛かる『キングスカップ』というラリーに参戦した(本来なら2016年11月だったものの延期されていた)。車両はスバルWRX S4という新しい世代の直噴ターボエンジンを搭載するAT(CVT)車である。

結果はライバルの脱落や幸運などに助けられ国王賜杯を頂くことになったのだけれど、新しいエンジンということもあり勉強することが多かった。

なかでも驚いたのはエンジン油温の高さ。一般的に90~120度くらいまでの範囲で使うべしとされている。130度を超えてしまったら走行距離に関わらず交換が推奨されているほど。

一方、最近のエンジンは燃費を稼ぐため、なるべく高い温度のまま稼働させるようになっている傾向。WRX S4に搭載されている新世代直噴ターボも例外でなく、外気温の高いタイだとアイドリングすら100度近くまで上がる。競技区間でアクセル全開したら、簡単に120度を超えてしまった。果たしてどこまで上がるのか?

油温計を見ていると驚いたことに130度を軽く超え、139度まで上がったと思ったらデジタル表示が横バーになってしまった!おそらく140度を超えた、ということだと思う。当然ながら自動車メーカーは入念な耐久テストをしているため、この程度の油温でトラブルになることはない。オイル性能も十分耐えられると聞いた。

問題はオイルの質である。最近「安いオイルでも交換サイクルさえキチンと守っていればよい」という意見をよく聞く。けれど性能の低いオイルで140度になったら、あっという間に劣化するだけでなく潤滑性能まで影響与えてしまう。エンジンのためにも良くない。今回油温を見て改めてオイルの重要さを認識した次第。

ちなみに私は競技用としてスバルの純正オイルに『デュアルブ』を添加している。この組み合わせ、なかなか良い感じ。2008年から競技用としてずっと使い続けているが(デュアルブの前はモーターレブ)、エンジントラブル一度も無し。そればかりか高温による性能低下だって発生しておらず。

一般的にエンジンオイルの性能は、添加剤で決まるらしい。デュアルブを投入することにより、純正オイルの性能をワンランク向上させてくれるのだった。過酷な使われ方をするラリーの全開走行でトラブルを起こさず性能をキープしてくれるのなら、130度に達しない範囲で使っている限り余裕タップリだと思う。

WRX S4に限らず、新しい世代のエンジンで性能を長期間に渡り良いコンディションのままキープしようとしたい人は、デュアルブの使用を推奨しておく。今後も競技に出る際は、純正オイル+デュアルブの添加を続けようと思う。もちろん140度を超えたらエンジンオイルを交換することをすすめたい。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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