国沢光宏のホットコラム

2015 ドライビングテクニック

Vol.139「エンジンブレーキの上手な使い方」

一昔前なら「エンジンブレーキ」も比較的簡単に説明できた。曰く「下り坂では普通より低いギアに入れ、エンジンの抵抗をブレーキの補助として使う」というもの。今でも標高差が500m以上あるような下り坂など、フットブレーキを使いすぎれば、日頃メンテナンスされていない車両だとブレーキから煙を出したりします。

確かにマニュアルミッションやトルコンATの時代なら、誰でも低いギアに落とすことは理解出来たことだろう。しかし今やハイブリッドやCVTの時代になった。どうやったらエンジンブレーキを上手に使えるのか、なかなか理解しにくい。一方で、フットブレーキの性能はあまり進化しておらず。どうしたらいいか?

まずハイブリッド車。プリウスやアクアなどトヨタ式で言えば、いわゆる「エンジンブレーキ」が二つある。一つは『Bレンジ』。文字通り「ブレーキ」を意味するレンジで、ここに入れると普通のエンジン車の「ギアを一つ落とす」ような制御になり、エンジン回転数が上がります。緩い坂ならフットブレーキ使わずに走れるほど。

もう一つが「緩くフットブレーキを踏む」。ハイブリッド車はブレーキ踏むとモーターを発電機に切り替え「回生」というエネルギー回収モードになる。すなわちブレーキペダルをホンの少し踏んだ状態では油圧ブレーキでなく回生を行いバッテリーに電気を貯めていく。『Bレンジ』だと単にエネルギーを捨てるだけだが、回生はリサイクルなのだ。

電気自動車や燃料電池車にはそもそも「エンジン」がない

ということでハイブリッド車の上手なエンジンブレーキは「フットブレーキをホンの少しだけ踏む」というもの。これならブレーキを加熱させること無く、しかも電気を貯められるから環境にもやさしい。

ちなみに電気自動車や燃料電池車も同じ。そもそもエンジンが付いていないため、今までのイメージだといかんともしがたいです。

ATの主力になってきたCVTも判断が難しい。『Dレンジ』の他『Lレンジ』などエンジン回転数を上げるようなレンジもあるけれど、明確にエンジンブレーキが掛かっているとは体感しにくいと思う。

ディーゼルもエンジンブレーキが弱い

そもそも最新のECOエンジン(ディーゼルを含む)は、エンジンの機械抵抗(熱効率を含む)を徹底的に追求しているため、エンジンブレーキ効果が弱い傾向。

自動車メーカーも認識しており、最新型のCVTは各種センサーで「下り坂」という判定を行い、『Dレンジ』のままでも自動的に回転を上げてくれる制御など行う。その場合、最も良くないのはフットブレーキを長い時間連続で使うこと。連続的に使用するとブレーキディスクやドラムを冷却出来なくなり、過熱してしまう。

具体的に紹介すると、5秒くらいフットブレーキを踏んだら、同じくらいの時間を「掛けない状態」にすると良い。5秒踏んで速度を落とし、ペダル離して加速したら、また5秒間踏んで速度落とす、というテクニックを使えばブレーキを過熱させることなく安全に走れます。機会があったらぜひとも試してください。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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