国沢光宏のホットコラム

2006 ドライビングテクニック

Vol.31「雨の日の安全運転のために」

当たり前のことながら雨の日は事故を起こしやすい。
高度なテクニックを持つドライバーが雨専用タイヤを履いても、ウェットレースではクラッシュ続出となるほど。
以下、雨の日に安全を確保するためのノウハウを紹介したいと思う。

最も重要なのは「雨の量を常に認識しておく」ということ。
水溜まりも出来ないような雨量なら、ブレーキ性能の低下を意識し、ドライ路面の時より車間距離を多めに確保するだけで問題無い。
しかし水溜まりが出来るようになってくると、危険度は急激に高まっていく。
F1レースを見ても、雨の日はウェットタイヤを履かないと面白いように滑る。
普通のクルマだって大雨に遭遇してしまえば、全く同じ状況となるのだ。
テストコースやサーキットで雨の日に走る場合の目安を紹介しておく。
まず「路面が濡れているだけの状態」なら、早めにブレーキを踏むことと、コーナーの速度を抑えるだけ。速度の規制は無い。

しかし「水溜まりが出来るようなコンディション」になってくると、俄然難しくなる。
基本的に水溜まりを避けるラインを選択しなければならない。
もし避けられないような水溜まりなら、滑っても真っ直ぐ抜けられるよう、直線的に通過するのが常識。
というか水溜まりを120km/h以上で通過すると、タイヤが水の上に乗るというハイドロプレーニング現象(モーターボートのような滑走状態をイメージしていただければよい)、になってしまう可能性を常に想定していなければならない。
雨量が増え、水溜まりを通過した際「ゴゴゴゴゴ!」と床下にタイヤがハネた水の音や振動を感じるようになったら、80km/h以下まで落とさないと危険。
つまり普通の雨と、水溜まりの出来る雨は全くの別物だということだ。
プロのドライバーでも水溜まりのある状況では細心の注意をしながら走っているという事を認識していただければ嬉しい。

万一ハイドロプレーニング現象に遭遇してしまったら(ハンドルの操作感覚が無くなる)、急なブレーキやハンドル操作は禁じ手。アクセルをゆっくり戻す。
また、ハンドルを切った状態でハイドロプレーニングから回復すると、急にコースアウトしてしまう。
ハンドルも真っ直ぐの状態をキープしておいて欲しい。

タイヤがすり減った状態。スリップサインが完全に出てしまっています。

写真のような“ほとんど洪水”となった時の走れる目安は「床下が水面に付くまで」。
それ以上の水深になると、対向車とすれ違った際に受ける“波”が冷却ファンなどで巻き上げられ、エンジンルーム内の電気系に降り注ぐ。当然エンストすることもある。
よく台風や出水のニュース映像を見ると、皆さんけっこうな速さで水溜まりを走っていく。
徐行するくらいの気持ちでどうぞ。
また水深の解らない水溜まりは、様子を見ること。
他のクルマが走っていく状況をチェックし、床下まで達する水深でないことを確認して欲しい。
マンホールのフタが開いていることもあるから怖い。

大雨の中を走ったら、電気系のメンテナンスなどしたらいかがか。
エレクトロニッククリーナー』や『コンタクトスプレー』を使うと接触不良の防止になる。
もし残りミゾの少ないタイヤを履いているなら、梅雨や台風シーズンの前に交換すること。
新しいタイヤと寿命寸前のタイヤでは、スリップする速度からして全く違う。
タイヤのサイドにある『スリップサイン』(タイヤのミゾが一部浅くなっている)
が一カ所でも接地していれば使用不可。
危険なので迷わず交換しなければならない。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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