国沢光宏のホットコラム

Vol.87 震災に負けない自動車業界

 東日本大震災によって自動車産業は大きな被害を受けた。通常の地震であれば揺れで損壊した工場の製造ラインを立て直せば平常復帰するものの、津波により工場建屋ごと根こそぎ持って行かれたケースも多い。こうなると同じ場所に工場を建てるのが難しくなるため、ゼロからのスタートになってしまう。

 また東日本地域には「特定の企業でしか作れない」というオンリーワンの素材や部品も多い。被災していない西日本地域の工場まで影響を受け、全てのメーカーの工場が生産を休止。日本から部品を購入している世界中の自動車メーカーの工場も相次いで操業停止となってしまった。

 関係者の懸命な努力により4月上旬から全社揃って通常の半分程度ながら稼働を開始する計画を立てていたものの、4月7日の大きな余震によって再び広範囲な地域で損害があり、またも遅れを出すことに。どこの自動車メーカーに聞いても「リーマンショックの時より厳しい状況です」。

 また、稼働を開始しても夏場の電力不足という大きな課題が出てくる。鋳物や樹脂、塗装工程などは停電した前後の時間もラインを動かせない。夜間や土日、夏休みの移動といった対策だけでなく、東日本で生産する予定の車種を急遽西日本に変更するメーカーも出てきた。

 今後どうなっていくだろう? 楽観的な見通しにこそならないけれど、自動車産業のポテンシャルは高い。復旧への動きが本格的になれば、夏休み明けにはフル稼働出来るようになると思う。また、今回驚いたのは「オンリーワンの部品や素材の取り合いをしない」という約束をしたこと。

 本来なら大きいメーカーからフル生産となってもおかしくないのに「各社操業を開始」というニュースを見ると、全メーカー揃って「当面は半分程度の稼働率」であることを伝えている。これは各社のトップが紳士協定を結んだからだ。今日勝てばよい、という考え方は武士道に反すということです。

 また、今回の災害と前後し(中東情勢を含む)、世界規模で原油事情が厳しくなり高騰。当然ながらECOカーの重要度は増す。この分野、基本的に日本の自動車メーカーの得意とするところ。実際、プリウスが極端な品薄となったアメリカでは、中古車価格が新車価格を超えてしまったほど。

 さらに2011年は普通のエンジンでいながら、10・15モード燃費で30km/L前後を実現しているコンパクトカーや軽自動車もデビューしてくる予定。特に軽自動車は80万円を切る価格らしい。今回の震災のダメージから抜け出せば、日本車の長所を存分にアピール出来ることだろう。