国沢光宏のホットコラム

Vol.60 米国BIG3の行方は? PartI

TVや新聞などで報じられている通り、かつて日本自動車メーカーにとって雲の上の存在だった米ビッグ3(GM・フォード・クライスラー)が破綻の危機を迎えている。
果たして今後どうなるだろうか?

あまり報道されていないことながら、ビッグ3の凋落は3年前から始まっていた。

アメリカ車の代表的存在の「ハマー」。

2005年初頭より販売不振に陥り、大型SUVを中心とした安売りが始まる。同年5月、私のWebサイトで「破綻もあり得る危機的な状況」とレポートしています。
企業の経営評価をする『格付け機関』(ムーディーズなど)も5月に「投機的」という判断を下した。
実際、GM低迷の余波を受け『デルファイ』という世界最大の部品メーカーがチャプター11(米国の会社更生法)の適用となる。
夏前になるとGMの販売不振は一段と拡大し、もはやなりふり構わず「従業員と同じ割引を適用する」という安売りを開始。500万円のSUVだと100万円以上の値引きが普通になってしまう。
その後も財政状況が悪くなる一方。翌2006年3月にGMはスズキの株式2300億円分を売却。
6月に入り格付け機関は一段と厳しい「借りたお金を返せない可能性が高い」(ムーディーズの場合、Caa1)と評価した。

「フォード・マスタング」

なぜ売れ行き不振に陥ったかといえば、割と簡単な理由による。2005年あたりからガソリン価格の高騰が始まっていたのだけれど、ビッグ3は燃費の良い小型車の開発に興味を示さなかったのだ。
もちろんビッグ3だって座して眺めていたワケでない。何度も抜本的な人員整理や立て直し策を行っている。
一時期、ゴーン社長は本気で日産との提携も考えていたようだけれど、GM側から一方的に蹴られてしまう。
その後も決定的な打開策を見つけられないまま業績悪化が続き(格付けもどんどん低くなっていった)、2008年のサブプライムローン破綻を迎えてしまう。今や従業員の給与や、部品の購入代金の支払いも厳しくなっている。

ここまで読んで頂ければ、今後の流れも読めることだろう。米国議会は12月に公的な資金の導入を検討したけれど、基本的に破綻の先延ばし策でしかない。決定的な問題である「燃費の良いクルマを作れない」を解決出来ていないからだ。

「クライスラー」

2009年1月に就任するオバマ大統領の手腕を持ってしても、2005年からの流れは断ち切れまい。
こうなったら破産法を適用し、一度借金を全て清算。日本の自動車メーカーの技術を導入した「売れるクルマ」を作らない限り、再建など不可能だ。
参考までに書いておくと、破綻前の企業買収や譲渡は考えにくい。
他の自動車メーカーがクライスラーを1ドルで買ったとしても、支え切れまい。借金を背負う体力さえ無いからだ。
破綻したら会社更正法を申請。「しがらみ」を断ち切れば、再スタートも出来るだろう。
ちなみに今回の不景気は世界的な規模。ビッグ3だけでなく、体力のない自動車メーカーに(少なくとも1年以上赤字を出しても耐えられる財力、という意味。日本や韓国も例外でない)破綻の可能性がある。

もしビッグ3が破綻するようなことになれば日本を含めた世界の自動車業界にどんな影響を与えるだろうか?
<次回に続く>