国沢光宏のホットコラム

Vol.169 インジェクションとキャブレターの違いとは?

旧車にはまだまだキャブレター車も残っている 写真はスバル360のキャブレター
旧車にはまだまだキャブレター車も残っている
写真はスバル360のキャブレター

 乗用車では姿を消してしまったキャブレターながら、中古バイクの多くに残っている。最近インジェクションとキャブレターの違いを説明している記事は皆無に近いため、紹介しておきたい。

 バイクや30年以上前の旧車に乗るときがあれば扱い方を覚えておくといいだろう。まず基本的な概念だけれど、インジェクションもキャブレターも全く同じ。ガソリンを完全に燃焼させようとすれば、理論空燃比と呼ばれる「空気14.7にガソリン1」を混ぜた混合気をエンジンの中に送り込まなければならない。

 この混合気を作る役割を果たすのがインジェクションやキャブレターである。インジェクションの場合、エンジンの中に入ってくる空気の量をセンサーで計り、その中に「インジェクター」と呼ばれる霧吹き装置を使い適正なガソリンを混ぜてやる。空気の量と混ぜるガソリンの量を正確にコントロールしてやることで完全燃焼し、パワーや燃費、排気ガスのクリーン度を追求可能。だからこそ最近のクルマを見ると全てインジェクションになった。

 一方、キャブレターはベンチュリー効果と呼ばれる流速の違いを利用して空燃比を作る。飛行機の翼の上面は空気の圧力が低くなるため飛ぶ。キャブレターは、飛行機の翼の上面に穴を開け、ガソリンを流してやるというイメージ。ガソリンは吸い出され、霧状になって飛んでいく。この霧を混合気だと思って頂ければOK。キャブレターの直径や形状、吸い出しの穴の大きさを変えることにより、理論空燃比に近い混合気を作る。当然ながらインジェクションより大ざっぱな空燃比になってしまうため、完全燃焼は難しい。

キャブレターの構造図
キャブレターの構造図

 さらにエンジン始動直後は理想空燃比より濃い燃料を供給しないとスムーズに回らない。インジェクションであれば自動的に濃い混合気を作れるが、キャブレターだと無理。そこで「チョーク」という一時的に濃い混合比にする装置を付けるのだけれど、これの扱い方が難しい。暖まっているときにチョークを使えば燃料が濃すぎ、エンジンの中がくすぶってしまい始動不良になる。

 また、チョーク使っているときにアクセルを深く踏むと、これまた燃料濃すぎて止まってしまう。逆にチョークの使い方が足りなければ当然エンジンが掛からず、バッテリー上がりの要因に。そんなことから、キャブレターのバイクやクルマは1台毎にエンジンの掛かり具合が異なる。寒い冬の日など、エンジン掛けるのはチョークの使い方やアクセルの踏み方など微妙な調整が必要。一発で掛けられるかどうかもドライバーのテクニック次第だったほど。ボタン押せばエンジン掛かるなんて夢のようである。

 良い悪いで評価するなら圧倒的にインジェクションに軍配を上げておく。レース用エンジンだってインジェクションだ。ただキャブレターは安価でシンプル。コストも圧倒的に低い。ということから、30年くらい前まで同じエンジンでもインジェクションの方がキャブレターより15万円くらい高かったほど。最近のバイクの値上がりの要因も、排気ガス基準が厳しくなり、インジェクション化しなければならなくなったためである。もしキャブレター車に遭遇することがあれば、20世紀の味を存分に楽しんで欲しいと思う。