国沢光宏のホットコラム

Vol.133 燃料電池車と水素ステーションの拡充

 燃料電池車を普及するにあたり、大きな課題となっているのが燃料の「水素」を充填するための『水素ステーション』と呼ばれるスタンド作りである。2015年4月時点で稼働開始するのは全国20カ所程度。しかも埼玉県より北に行くと設置計画すら無い。今後どうなっていくのだろうか?


 まず水素ステーションの概略を。文字通り水素を充填する場所なのだけれど、大きく分けて二つのタイプがある。一つは『オンサイト』と呼ばれるタイプで、天然ガスやナフサ(ガソリンの素材)などから敷地内で水素を作るというもの。複雑かつ高価な設備を必要とします。

 二つ目は『オフサイト』と呼ばれるタイプ。他の場所で作られた水素を圧縮した状態で運び、燃料電池車に充填するというもの。ガソリンと同じようにローリーなどで運んで売る形態。設備的にオンサイトより大幅に簡便ながら、現時点で1カ所あたり5億円近いコストが掛かると言われている。

 どちらも1日あたりの充填能力は水素残量5分の1になったトヨタ・ミライ20~30台くらいだという。毎月2回充填するとしたら、一カ所あたり300台の燃料電池車を稼働させられる計算。とりあえず今年度に販売されるミライは最大で400台と言われているため十分間に合う。

 気になる水素の価格だけれど、現時点で1kgあたり1000~1100円(供給する企業によって異なる)。ミライに満充填すると5kg入る。1kg=ガソリン10L分程度をイメージして頂ければいいと思う。ちなみに水素1kgでミライは100km前後走ると考えれば間違いない。

 横浜にある旭水素ステーションで水素を充填してみた(このステーションで最初の利用者だったそうな)。水素2kgで2000円。それに8%の消費税乗り2160円なり。燃料コストでいえば、ミライとほぼ同じ車格となるクラウンやカムリ級のハイブリッド車程度。コスト的には実用域に達している。

 もちろん現在の水素価格は利益を上げられるレベルと言えない。ただオーストラリア等で大量に採掘出来る『褐炭』(品質として最下位の石炭。今まで使い道が無かった)から水素を取り出すと、1立米あたり30円のコストで済むことが解ってきた。この水素を使うことにより、1kg=1000円は可能。

 よく燃料電池車と水素ステーション(水素の生成方法を含む)の関係について「鶏が先か卵が先か」論となる。今までの動きを見ていると、球技のボールとコートの関係に似ている感じ。役所がゲーム開始を宣言し、ボールを自動車産業に投げた。トヨタは見事ミライを開発。役所に投げ返す。

 すると役所は少なからぬ補助金を付け、さらに水素ステーションの拡充という強烈なワザを繰り出す。結果、トヨタの予想を超えるほどミライはバックオーダーを受けてしまう。納期5年と言われる状況。ということで現在ボールは自動車産業側にある。「もっと作れ」ということです。

 自動車産業側は急いで大量生産に向けた技術開発を行っている。すると水素ステーションの数が足りなくなるだろう。東北地方にだって水素ステーションを作らなければなるまい。この激しいラリーで燃料電池社会は進んで行くかもしれない。皆さん考えているより早い時期に、燃料電池車が普及する?